問題が収束した夜、保護者会から戻って長男に「もっと早く相談してくれればよかったのに」と言ったら、「だって、心配するじゃん」と言われた。子どもは心でウソをつくのだ。
A、Bタイプのように、ウソが心のシグナルをともしていそうなとき、私たち大人はどう対応すればよいのだろう。
一番の注意点として、松井さんは「表層に現れたこと(ウソの言葉や話)だけに心を奪われず、表情や行動など子どもの状況全体を見ること」と、「安心させること」の2点を挙げる。
ウソをついたことを責めるのではなく、理由を探すことに心を砕くことが重要だ。そして、ウソをつく子は多くの場合、不安感が強い。よって、「大丈夫だよ。ウソなんてつかなくていいよ」と肩を抱いたり、背中をなでたりしてほしい。
逆に、やってはいけないことは、ウソをついたことをきつく咎めたり、叱ったりすること。一例として、塾をサボっているのに「行ってきた」とウソをつくのは、そこでの学習についていけないとか、講師と肌が合わない、もしくはそもそも塾に行きたくて行っているわけではない、ということもある。
「塾にちゃんと行きなさい、お金がもったいないと思わないの? と注意したいところだが、子どもが行き詰まったり、納得して塾通いをしていなかったりなどマイナス要因がある場合は、説得しようとしても耳には入らない。正論をぶつけて諭すのは、マイナス部分がなくなり子どもの心が元気になってからにしましょう」(松井さん)
特別なケースはCだろう。DVや児童虐待等の問題が横たわる家庭環境でサバイブしている子どもは、ウソをつくことで自分を守る。親の虐待を隠すのは、明るみに出て親からひきはがされることを恐れているからだ。
「つらい家庭環境で生きている子は、貧困や虐待を直視せずにウソの世界に身を置くことで自分の精神を保っている部分がある。自分は子どもで、子どもは無力だということをわかっている。生き抜くために必要なウソです」
と松井さんは説明する。