その小泉が自民党幹事長や官房長官に抜擢して首相へのレールを敷いたのが、安倍晋三。そして今、小泉の息子・進次郎が「ポスト安倍」の候補に挙がり始めている。
「世代」というくくりには意味がないという見方もあるが、12年に、70年以降生まれの若手論者のみで討論番組「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」を始めたNHKエンタープライズのエグゼクティブ・プロデューサー、丸山俊一は「思春期の原体験が精神形成に影響を与えることは否定できない」と言う。自身が9歳のときに目にしたあさま山荘事件を「集団心理の恐ろしさが刷り込まれた時かもしれない」と語る。
オウム真理教事件、東日本大震災といった世間を揺るがす大事件に、人生のどんな時期に遭遇したかは、世代のメンタリティーに作用すると考える。
「各世代の背後にある時代の物語を想像しつつ、対話する精神が大事です」
86年に新語・流行語大賞で金賞を受賞した「新人類」。その代表格とも言われた評論家の中森明夫は、10歳前後年上にあたる「団塊の世代」についてこう語る。
「団塊の世代からは『新人類は甘くてダメだ』と絡まれ、ひどい目にあった。一方で、われわれ世代は『団塊ウザイ』と言う。今思うと、ケンカを通して世代間闘争というコミュニケーションをしていたんだと思う」
だが中森は、「現代の世代間闘争は、かつてのような牧歌的なレベルではなくなった」と指摘する。
団塊の世代が年金をもらい始め、いずれ若い世代では支えられなくなる。膨大な数の高齢者を前に増える医療費をどうするのか──。
「平成の早い段階で年金の制度設計を変えるなど抜本的な改革をすべきだったし、少子化に対する認識を根本的に改めるべきだった。この無理なモデルは政治の力で変えられたはず。なのにやらなかった」
中森は言う。
「日本では安楽死は認められていませんが、回復の余地がない人に医療費が投入されることが問題になるでしょう。団塊の世代が寝たきりになる前に、安楽死について議論すべきでは?」
(文中敬称略)(編集部・小柳暁子)
※AERA 2018年5月21日号