組織も働き方も変わってきている昨今。求められるリーダー像もガラリと変わりつつある。強くて、声の大きいだけのリーダーでは、もう誰もついてこない。ビジョンを示し、部下の強みを引き出し、変化を起こす。そんな人材が今求められている。
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ある成長企業が新規事業立ち上げの責任者を募集した。最終選考に残ったのは2人。「同業種の大手企業の企画部門で15年のキャリアを持つマネジャー経験者」と、「複数の業種、職種を渡り歩いた転職歴3回のベンチャー企業出身者」。
果たして、採用されたのはどちらか?
答えは後者だ。かつてなら大手企業で長く働きマネジメント経験を持つことは転職の武器だった。だが、今では必要とされるスキルが変わっている。
「異動、転勤、転職などで幅広い業務を経験しただけでなく、『修羅場』をくぐり抜けてレジリエンス(回復力、弾力)を高めた人材は特にニーズがあります」
そう語るのは、リクルートで約25年にわたり、企業の採用支援・転職希望者のキャリア支援を手がけてきた転職エージェント・森本千賀子さんだ。マネジメント人材の採用において、企業が求める要件は明らかに変わってきているという。
一昔前、管理職といえば「俺の背中を見て学べ」「黙って俺についてこい!」といったような「カリスマ型」や「トップダウン型」が主流だった。
しかし、そのやり方は今では通用しない。今時の若手社員は、「競争」に慣れておらず、個性を重視した教育環境の中で育ってきた。そんな彼らのモチベーションを上げ、力を引き出せるのは「サーバント(奉仕者)型」のマネジメントだという。
「サーバントリーダーシップ」とは、米国のロバート・K・グリーンリーフ博士が提唱した「奉仕こそがリーダーシップの本質である」という概念だ。
「リーダーは組織としてのビジョンやゴールを示す。それに向けて、メンバー自身が独自の強みを生かして実行する。また、リーダーは各メンバーが目指すキャリアビジョンを理解し、その実現を支援する。そんな組織マネジメントができる人材が求められています」(森本さん)