ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 先週の地方銀行に関する記事にはたくさんの反響をいただきました。まあ、賛否両論なんですが、地銀の融資能力の低下については「うちの地元もそうです」というお声が圧倒的に多かった。

 そもそもなんでこんなことになってしまったのか。これには歴史的背景から説明が必要でしょう。

 日経平均株価は1989年に付けた史上最高値3万8915円を頂点に、その後は急落していきました。これは日本銀行がバブル退治と称して、利上げをし、金融機関に対する規制を強化したために融資が回らなくなり、特に不動産を中心に急激に資産価格が下落、保有していた資産や債権などの価値が減少していく事態を引き起こしたという背景があります。そもそもここに至る遠因は85年のプラザ合意という話もありますが、ここでは説明しません。

 いずれにせよ、資産価値の下落のスピードは、金融関係者が思っていたより、よほど速かったわけですが、悪いことにこれを一時的な現象として、いずれはまた戻るという考え方が横行し、早めに手を打っていれば大したことがなかったものが、雪だるま式に不良債権として膨らんでいったのです。

 ついには山一証券や北海道拓殖銀行、3長信銀の倒産などにつながり(日本興業銀行は生き残りましたが、結局自力再建をあきらめてみずほグループの傘下に入ることになりました)、それがさらに資金の停滞を招き、長期の資産価値の下落(デフレの長期化)という事態に直面したわけです。

 特に不動産は、いつかはまた戻るという高度成長期の「神話」が強く残ったため、不良債権処理が最も遅れたのです。いずれにせよ、多くの地銀がまだ当時の傷を引きずっており、現在なお次々と再編の波にのみ込まれています。

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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