ダイキンサンライズ摂津では車椅子で作業する身体障害者や知的障害者、精神障害者らが一緒に働く。製造現場で働くのは障害者だけ。作業しやすくする改善作業にも障害者が取り組んだ(大阪府摂津市)(撮影/写真部・小原雄輝)
ダイキンサンライズ摂津では車椅子で作業する身体障害者や知的障害者、精神障害者らが一緒に働く。製造現場で働くのは障害者だけ。作業しやすくする改善作業にも障害者が取り組んだ(大阪府摂津市)(撮影/写真部・小原雄輝)
スワンベーカリーの販売やパン焼き作業で働くのは主に知的障害者。店ではたくさんの種類のパンが売られているが、勤続20年近くの人は間違いゼロのレジ打ち名人(東京都中央区)(撮影/鈴木芳果)
スワンベーカリーの販売やパン焼き作業で働くのは主に知的障害者。店ではたくさんの種類のパンが売られているが、勤続20年近くの人は間違いゼロのレジ打ち名人(東京都中央区)(撮影/鈴木芳果)

 4月から障害者の法定雇用率がアップした。従来の法定雇用率を達成している企業はほぼ半数。今後も雇用率のアップは続き、障害者雇用への企業の覚悟が問われる時代になった。

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 年間で約1500人もの企業や地方自治体、福祉関係者が見学に来る工場が大阪府摂津市にある。どのようにして障害者雇用を増やせばいいかと頭を悩ませて訪れるのは、大手エアコンメーカー、ダイキン工業の子会社「ダイキンサンライズ摂津」(澁谷栄作社長)。150人余りの従業員のうち138人が障害者で、ダイキン向けのエアコン部品や油圧部品などを手がける工場だ。

 工場内は車椅子で自由に動けるバリアフリー構造。製造工程にもいろいろな工夫が施してあり、赤、緑、青のランプの色で三つの作業を分かりやすく誘導する仕組みもある。複数の部品を取り付ける工程では、部品をトレーの決められたところに入れて、それを組み立てる。ミスなく組み立てればトレーの部品はすべてなくなる。まるで毎日、いろんな薬を飲み忘れないようにするトレーのようだ。松本淳治製造部長は「すべて障害者が工夫して改善したものです」。そう話す松本部長も車椅子で作業をする障害者である。

 サンライズの設立は1993年。大阪府と摂津市からの働きかけでできた合弁会社でダイキングループが株式の過半を持つ。当時の山田稔ダイキン社長(故人)は「高齢者、障害者、男女を問わずあらゆる人が明るい人生を送る時代が来る。そのような社会づくりに会社として参画したい」と考えたという。

 ただ立ち上げ直後はずいぶん苦労した。身体障害者16人で建築機械向けの油圧製品を作ったが、バブル崩壊後の景気低迷で大赤字に。それでも自立を目指してグループ各社からサンライズで作れそうなエアコン部品を探し始めた。96年から2013年まで社長を務めた應武善郎顧問は当時を振り返る。

「障害者の方にどんな仕事をしてもらうかの見極めが肝心だった。小さな油圧製品なら作れるだろうと手がけたが、当時の景気の悪さもあり、うまくいかなかった。その後、グループ内を見渡すと、障害者だけで作れるエアコン部品がほかにもたくさんあった」

 それらをかき集め、95 年以降に業績は回復。黒字に転換した。

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