染色組合では、染色工場を見学し、実際に染色を体験する「オープンファクトリー」も開催。

 イベント当日は親子連れから70代まで、年代、性別もさまざまな40人が参加。色や染色に関心があるということで、北海道や兵庫など県外からやってきた人もいた。

「工場見学のあとは、『今治の色』4色から一つを選んで、実際に染色を体験してもらいました。工場見学もワークショップも初めての試みでしたが、やってみると温かな雰囲気のなかで進められました」(同)

 今治カラーショーのディレクターでワコールアートセンターの松田朋春さんは、ムホーさんを起用した理由をこう話す。

「染色組合が初めて取り組むイベントが、世界水準のアート作品であることが重要だと考えました。『色を扱うことは文化的な仕事だ』という意識を、まず染色組合の方々に持ってほしかった」

 染色業に携わる当事者が、自らの仕事の意義を理解してこそ、他の人たちに伝えることができる。そのためにさまざまな業界からゲストを招き、2年間かけて勉強会をおこなってきたのだ。

「工場見学やワークショップで、現場の方々がイベントをやりとげた自信と一体感を持っていると感じられました。やってよかったと思いましたね」(松田さん)

 後継者不足、高齢化と日本の産業界には暗い話題がつきない。それでもまだ間に合う。未来を変える可能性はあるのではないか。そう思えたイベントだった。(ライター・矢内裕子)

AERA 2018年3月19日号