染色を体験(撮影/Kanako Hamada)
染色を体験(撮影/Kanako Hamada)
「流行色を今治から」の思いから生まれた「今治の色」。「菊間グレー」「桜鯛ピンク」などが並んだ(撮影/Kanako Hamada)
「流行色を今治から」の思いから生まれた「今治の色」。「菊間グレー」「桜鯛ピンク」などが並んだ(撮影/Kanako Hamada)

 後継者不足など問題が山積する染色工業。そんななか、愛媛県繊維染色工業組合(染色組合)が東京・青山のスパイラルガーデンで、染色の工程などを伝える「今治カラーショー(IMABARI Color Show)」を開催した。イベントで実施した「オープンファクトリー」では、染色組合が未来志向で新しい試みに踏み出した。

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 「今治カラーショー」では、さまざまな色に染め分けられた帆布のパーツを天井から吊り下げた、まるで色のシャワーのようなインスタレーション「1000色のレシピ」が飾られている。「1000色のレシピ」をデザインしたのは、フランス生まれのエマニュエル・ムホーさん。1995年に初めて来日し、東京・池袋に立ったとき、さまざまな色があふれる様子に衝撃を受け、東京に暮らすことを決意した。

「池袋の街を見たとき、同時に無数の色が浮いているように見えました」

 ムホーさんは色で空間を仕切る「色切/shikiri」というユニークなコンセプトで知られ、ユニクロやイッセイミヤケのディスプレーデザイン、国立新美術館の「数字の森」などのアート作品を発表してきた。

 100色のインスタレーションをムホーさんは展開しているが、1千色はその10倍。色選びから、染めることまで、すべてが挑戦だった。

 彼女の要望を実現したのが、今治にある染色組合に所属する8社だ。理事長の山本敏明さんは「近いように見える色も全て違う。1千色を染め分けるのは大変な作業でした」と振り返る。

 作品に使った帆布を染めるのも初めて。グラデーションでもなく、それぞれが異なる色に仕上げるための期間は1カ月。染色組合の8社と染料メーカー4社にも協力してもらった。

「こうした共同作業をやってみて、メーカー同士で一体感が生まれました(笑)」(染色組合の理事長を務める、西染工の代表・山本敏明さん)

 さらに「流行色を今治から発信してもよいのでは」と、日本流行色協会の大澤かほるさんを講師に迎えたワークショップを実施。染色工場の人たちと行政の職員で構成されたプロジェクトチームで、身近な自然や文化から「今治の色」について話し合った。その結果、今年の「今治の色」として選ばれたのは「しまなみ海道ブルー」と「桜鯛ピンク」。イベントのテーマカラーにも使われている。

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