小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
子宮頸がんのワクチンを開発したイアン・フレイザー教授 (c)朝日新聞社
子宮頸がんのワクチンを開発したイアン・フレイザー教授 (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【子宮頸がんのワクチンを開発したイアン・フレイザー教授】

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「オーストラリアは、世界で初めて子宮頸がんを撲滅する国になるかもしれない」──IPVS(国際パピローマウイルス学会)がそんな声明を出しました。

 イギリスのガーディアン紙などの記事によると、オーストラリアが2007年から開始したHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの学校での無料接種プログラムが功を奏し、今後の発症数は大幅に減るだろうという調査結果が発表されました。

 この無料接種プログラムは、当初は12〜13歳の女子を対象に、13年からは男子にも拡大。それ以外の年齢でも19歳未満なら2回の無料接種が受けられます。

 現地のハイスクールに通う私の長男も、8年生(中2)の時に学校でワクチンの無料接種を3回に分けて受けました。

 HPVは、子宮頸がんや尖圭コンジローマの原因となるごくありふれたウイルス。セックスによって感染するので、女性だけでなく男性にもワクチンを接種することでより感染者を減らせるといいます。

 16年の調査ではオーストラリアの15歳女子の78.6%、同男子の72.9%が接種済み。このプログラムの実施の結果、05〜15年の10年で18〜24歳の女性のHPV感染率は22.7%から1.1%にまで劇的に減少。男性の集団免疫も実現しつつあり、結果としてHPVの感染拡大防止や、接種を受けられない人たちを感染から守ることにも効果が上がりつつあるというのです。

 オーストラリア政府は25〜74歳の女性に子宮頸がんの新たな定期検診制度の導入を決定。ワクチン開発者の一人であるクイーンズランド大学のイアン・フレイザー教授は「定期検診とワクチン無料接種との併用で10〜20年以内には新症例はなくなるであろう」と述べています。一方で、開発途上国など世界の3分の2の女性たちはこのような制度がないままだと懸念を示しています。

AERA 2018年3月19日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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