このボリュームゾーンである労働者階級が、次第に「正規雇用」と「非正規雇用」で二分されるようになった。新たな階級として登場したのが、橋本教授がいう「アンダークラス」だ。
「アンダークラスとは、パート主婦を除く非正規労働者を指します。05年と15年のSSM調査(社会階層と社会移動全国調査)で20歳から59歳までの正規労働者と非正規労働者(パート主婦を除く)を比較すると、正規労働者は個人年収と世帯年収いずれも増加しているのに対して、非正規労働者の場合、女性の個人年収を除き、大きく低下しているのです」(橋本教授)
非正規労働者の収入減は顕著で、個人年収(男性)で24.4万円、世帯年収で76.9万円(男性)、53.2万円(女性)だ。
「このアンダークラスが、全階級の中で激増しているのです。02年には691万人、07年には847万人、15年時点では929万人にものぼり、就業人口の14.9%を占めています。女性の比率が全階級の中で最も高いことも特徴です。アンダークラスは、いまや社会の主要な要素のひとつです」(同)
アンダークラス──。衝撃的な言葉だが、橋本教授はこのアンダークラスこそ、「ほかの階級の生活の安定のために犠牲になっている」と指摘する。
「もしも、正規雇用者と非正規雇用者の業務内容がほぼ同じで、待遇が違うというなら、それは階級格差そのものでしょう」(同)
(編集部・熊澤志保)
※AERA 2018年2月26日号より抜粋