手術支援ロボット「ダビンチ」による手術の様子/岡山大学病院(撮影/朝日新聞社・中村通子)
手術支援ロボット「ダビンチ」による手術の様子/岡山大学病院(撮影/朝日新聞社・中村通子)
この記事の写真をすべて見る
手術台と離れた制御台から、医師が両手両足を使ってアームに指示を出す。内部の様子はモニター画面に鮮明に映り、アームが細かい作業をする/岡山大学病院(撮影/朝日新聞社・中村通子)
手術台と離れた制御台から、医師が両手両足を使ってアームに指示を出す。内部の様子はモニター画面に鮮明に映り、アームが細かい作業をする/岡山大学病院(撮影/朝日新聞社・中村通子)

 がんを攻撃するのは、外科手術、放射線、薬の総力戦だ。より負担が少なく、“患者に優しい”治療の選択肢が広がっている。

【写真】「ダビンチ」の制御台はこちら。まるで“コックピット”のよう…

 4月から、公的医療保険で受けられるがん治療の選択肢が広がる。まず、外科では、手術支援ロボット「ダビンチ」を用いた腹腔(ふくくう)鏡手術は、これまで前立腺がん(前立腺全摘除術)と腎細胞がん(腎部分切除術)の二つの臓器が対象だったが、新たに12の術式が対象となる。胃がん、肺がん、子宮体がん、直腸がん、膀胱(ぼうこう)がんなどでも、ダビンチを用いた腹腔鏡手術が保険で受けられるようになる。

 ロボットと言っても、“ペッパーくん”のようなロボットがスタスタと患者に向かって、人工知能(AI)を駆使したメスさばきを見せる世界はまだかなり遠い。ダビンチを操作するのは、あくまで熟達した外科医だ。

 最近は、がん手術でも腹部に小さな穴を数カ所開けて行う腹腔鏡手術が盛んに。傷痕が小さいために痛みが少なく、患者は早期の社会復帰が可能だが、外科医は乏しい感覚情報が頼みで、自由な手の動きも奪われる。1990年代以降、こうした欠点を克服しようと、米国で相次いで開発されたロボットの一つがダビンチで、手術支援ロボットとして承認されている。

 ダビンチには、腕(スレーブアーム)がある。離れた所にいる術者は、“コックピット”のようなモニターつきの制御台でマスターアームを操作し、患者の体内で作業をするスレーブアームを制御する。4本あるアームのうち、1本は腹腔鏡を持ち、3本は手術器具を操作する。

 従来の腹腔鏡は2次元画像が主流だったが、最近は3次元の高精細な画像が得られる上、鉗子(かんし)は7自由度(七つの関節)があり、可動域540度は人間の手首より広く、細密な動きができる。前立腺摘出のように狭い骨盤内で、縫合を含めた細かな操作が要求される手術でその特徴は最大限に発揮される。そのため、まず2012年に前立腺がんで、16年に腎細胞がんで保険適用された。

次のページ