「後期高齢者医療制度は、75歳以上と74歳以下を切り離すことで社会や世帯が分断される、現代の『姥捨て山』じゃないか、とさんざん批判されました。しかし、制度が施行されると、75歳以上の人の医療に対して誰がどれだけの負担しているのか、お金の流れがはっきりした。それまではどんぶり勘定だったわけですが、後期高齢者であってもお金が出せる人には出してもらい、若い人の負担を減らすためのやむを得ない仕組みだということが浸透した。今では社会や世帯を分断しているという声をほとんど聞きません」

■児童手当は誰のもの

 児童手当を、一律に一定金額を定期的に給付する「ベーシックインカム」のようにとらえ、所得制限撤廃を支持する人もいる。

「子どもは社会全体で育てるもので、政府が子どもに対して児童手当を給付する、という考え方です。給付の段階で所得制限を設けない代わりに、高所得世帯からは所得税で取り返す。しかし、保護者を課税対象とするならば、児童手当は保護者の所得でなければなりません。あくまでも児童手当は子どもに対して支給するものとするベーシックインカム論者からすれば受け入れがたい話でしょう。そこに論理的な矛盾があり、話がうまくまとまるとは思えません」

 児童手当の所得制限は、「生存権」の侵害であるから、撤廃を求める、という声もある。

「それは10年に子ども手当(現・児童手当)が創設された際、16歳未満の子どもに対する扶養控除(年少扶養控除)がなくなったことにこじつけたもののようです」

 扶養控除は憲法25条が定める「生存権」、すなわち「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するための最低生活費控除の一つとして設けられた、と考えられる。

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児童手当は「所得の再分配」