独特のブランドカラーで注目を集めているのは、AKIKOAOKIのデザイナー、青木明子(31)だ。青木が作る服は縫製が細やかで、一度手に取ると彼女の打ち出す世界観に引き込まれる。ブランドのアイデンティティーには、青木自身が育った環境が影響しているという。
「幼稚園から高校まで校則が厳しくて。制服だけでなく、ティッシュにいたるまで指定されていたんです」(青木)
14年に初めてのコレクションで作った服は、制服をイメージしたものだ。制限されていた過去に窮屈さを感じる一方、それが自分の個性になっていたことに気づいた。
その後のコレクションでも、社会に対する怒りや答えをはっきり出さない日本的あいまいさなどの意識を、繊細に作られた服で表現していく。
「伝えたいことをちゃんと消費者に伝えることができるように、販売方法から時代に合わせて考えていきたい」(同)
その「販売」という側面で若手デザイナーたちを支援しているのが、ルミネだ。
セレクトショップが低迷し若手デザイナーが服を売る場所は減少傾向だが、ルミネはルミネ新宿 ルミネ2に、クリエーターの発掘や育成のためのショップ「ルミネ ザ カルチェラ」を置いている。8坪ほどの小さなスペースだが、全国のルミネのなかでも人通りが多いといわれる場所。服からアクセサリー、雑貨に至るまで、若手デザイナーのブランド25件ほどを扱う。青木のAKIKOAOKIも、そのブランドの中の一つだ。
ルミネの石塚有貴(31)は、ルミネ ザ カルチェラをポップアップショップのような短期的な形式ではなく固定の売り場にした理由を、こう話す。
「ブランドがお客さまの目に留まるようにするため、ある程度の期間、ブランドを入れ替えずに取り扱いたい。ファッションの多様性を、発信力のある売り場で見せていきたい」
この取り組みは少しずつ認知され、顧客も定着してきた。
岸本万里(35)デザインの服や小物も、このカルチェラに置いてある。岸本は自らテキスタイルの柄を描き、それらを使ったmannine(マンナイン)というブランドを展開中。宇宙人や動物など、シーズンごとに異なるキャラクターを、ポップでかわいらしいタッチで描いたものが多い。伊勢丹新宿本店の15、19号という大きいサイズを展開するクローバーショップも、mannineを扱う。初めて開いた展示会で、伊勢丹バイヤーの目に留まった。
「難しい服を作っても、それは現実からかけ離れている。ディテールや服の形が奇抜でなくても、柄なら服に遊びを入れられます」(岸本)
岸本はあくまでリアルクローズにこだわり、デビューしてから一度も、ファッションショーをしていない。
「柄は流行に関係なく、日々を楽しく彩ってくれる。そんな柄の魅力をお客さんに寄り添いながら伝えていきたい」(同)