この数年は、神社界の「節目」となる。2018年には憲法改正の発議が取り沙汰され、19年4月には現天皇が退位する。神社界の「一大事」が続く。
全国約8万社の神社が加盟する神社本庁は、「自主憲法制定」と「皇室の尊厳護持」を強く求めてきた。神社本庁が組織した政治団体「神道政治連盟」は、それに加え、靖国神社の国家儀礼確立、道徳・宗教教育の推進、夫婦別姓反対、祝日の国旗掲揚などを国会議員に働きかけてきた。2016年末から17年1月には、一部神社で改憲への賛同署名を集め、物議を醸した。
神社界が政治との距離を縮めている現状を、現役の宮司はどう感じているのか。愛知県清須市にある日吉(ひよし)神社の三輪隆裕宮司(69)はこう語る。
「神社本庁、神政連の中枢幹部は、憲法改正の好機を逃すなと、より熱心に活動するでしょう。最近は神政連も日本会議にノウハウを学んで、氏子さんへの手紙や電話、声掛けなど政治運動が上手になった。ただ、個々の神社の宮司は、改憲でどの条文を変えるかなど細かいことには関心がない。神社本庁が『美しい憲法を』と主張するので、とりあえず賛同しておこう、と消極的に支持しているだけです」
三輪宮司は、安倍政権での憲法改正には反対という立場を取る。特定秘密保護法、安全保障関連法などを強行採決してきた安倍政権で改憲が実現すれば、民主主義、立憲主義がつぶされかねないと危惧しているからだ。
「最も危険なのは、緊急事態条項の創設です。首相の一声でいつでも戒厳令のような緊急事態を作り出し、従わなかった国民は共謀罪で取り締まる。その情報は、特定秘密保護法で隠蔽(いんぺい)される。日本が全体主義に突き進むための『3点セット』がそろってしまう。改憲の議論終盤で9条改正を断念する代わりに、緊急事態条項を押し通すというのが一番怖いシナリオです」
安倍政権に批判的ではない立場でも、政治との近さに危惧を抱く宮司はいる。埼玉県秩父市の秩父神社の薗田稔宮司(82)はこう話す。