高齢化が進む離島の物流をなんとかしたい。地方の課題を解決すべく、テクノロジーを駆使する人がいる。
瀬戸内海には外周100メートル以上の島が727ある。うち人が住んでいるのは推定で156島。IT企業の「かもめや」の小野正人社長(40)がつくろうとしているのは、これら離島間の自動物流システムだ。
島めぐりが趣味だという小野社長は、過去に高松市沖から8キロ離れた男木島(おぎじま)に1年間住んだ。離島に住んで分かったことがあった。定期船は、朝の7時から夕方の19時前までの間で1日6便だけ。
「島の住民は、この船の時間に合わせて生活をしています」
早朝や夜は島から出られない。海上タクシーがあるが、利用料金は割高だ。離島で増え続ける高齢者は、高松市の病院まで薬をもらいに行くだけで半日かかる。遠い島だと泊まりがけだ。自由に買い物もできない。何か解決する方法がないかと考えたときに知ったのが、無人航空機(ドローン)だったという。
「まず離島での物流のイメージをスケッチしました。上空ではかもめの形をしたドローンが飛んで島と島をつなぐ。海上では、荷物を載せた桃の形の入れ物がどんぶらこと流れて運ぶ」
船を桃の形にしようとこだわったのは、昔話の桃太郎に登場する鬼ケ島の伝説が残る女木島(めぎじま)が近いからだという。クラウドファンディングで約110万円の資金を集め、2015年1月、日本で初めてドローンによる物流実験を行った。荷物を積んだドローンは片道8キロを飛んだ。
ドローンを飛ばすのは容易ではない。航空法によると、離着陸ポイントには60平方メートルの空き地が必要だ。だが、離島には車も通れないような細い路地が多く、大きなスペースを確保するのが難しい島もある。そこで、無人飛行機だけでなく、障害物を自動でよけて進む無人輸送船で港まで向かい、そこから各家庭までは無人輸送車で配達する「島国モデル」を考えた。
20年までに無人物流のこの仕組みを島の人に届けたいと言う小野社長は、世界中からパートナー会社を探す。ドローンの開発は、スロベニアのベンチャー企業に協力してもらっている。日本で開発するよりもコストが抑えられるという。無人輸送車の協力会社も探しているところだ。輸送車のまわりに画像認識のカメラが付き、障害物を自動で避けて、横断歩道も渡れるものが海外にある。
「男木島では、高齢者は“オンバ”という手押し車で荷物を運んでいます。自動走行の無人輸送車には“スマート・オンバ”と名付けたい」(小野社長)
各島には風速や風向を測る気象観測装置を設置する予定だ。気象データと陸海空すべての運行状況などを見るアプリの開発も、ゲーム会社の協力を得て行っている。「24時間いつでも離島にデリバリーができるようにしたい」(同)。
18年には、スロベニアの企業が開発した垂直離着陸ができる、新型ドローンの運行テストを行う予定だ。(編集部・柳堀栄子)
※AERA 2018年1月1-8日合併号より抜粋