この秋、X JAPANのヒストリーを描いた映画「WE ARE X」の公開に合わせ、YOSHIKIは欧州を回った。そこで、見えてきたことがある。
欧州10カ国を回ること13日間。YOSHIKIはベルリン、フィレンツェ、アムステルダムなどの映画館で現地のファンと言葉をかわし、取材に応じた。バンドの位置づけについての分析は冷静かつ前向きだ。
日本だと外国で活動してるっていうだけでニュースにしてもらえるけれど、世界では僕らなんかまだまだ無名の存在です。
でも──。
X JAPANはこれからもヨーロッパでバンドとしてやっていける、大きくなれるという確信を得ました。この映画を見て自殺をやめましたとか、人生観を変えられたみたいな感想が予想以上に多かったんです。口コミでファンになったとも言われたし、映画が入り口になった方が多くてびっくりしました。
●「世界一不運なバンド」
BBCやZDFなど一流メディアに登場し、フランスのニュースショーでは、お天気コーナーで天気も読み上げた。
向こうのメディアにも何とか興味を持ってもらえたと思います。この映画を通して、世界各地に熱狂的なファンがいる日本のバンドで、現役のメンバーが亡くなるなど衝撃的なストーリーがあったんだというのが伝わった。イギリスのタイムズ紙では「世界一不運なバンド」なんて書かれて(笑)。
X JAPANが世界各地でツアーを始めてからもう10年近い。海外活動の息の長さは日本のメジャーアーティストとしては異例だろう。その長期戦を支えるYOSHIKIの優れたビジネスセンスは、もっと肯定的にとらえられていい。
実はかなり早くから、自分の楽曲の著作権と原盤の管理を始めている。音楽評論家・市川哲史の言葉を借りれば、日本のアーティストの地位向上という点で後続バンドが「足を向けて寝られない」ほどの「革命的貢献」をしている。
原盤管理を始めたのは早かった。自分で納得するまで動けない人間だから。最初にメジャーレコード会社と契約したとき、系列音楽出版社に登録するように言われたんです。理由を聞くと「みんなそうだから」。他にもいろいろ疑問が出てきて、納得できないから弁護士に相談したら本来は作家に権利がある、と。1作目だけは登録しましたけど、それ以降は全部自分たちの出版社で管理しています。このバンドで長くやっていきたい。だとしたら自分たちで権利を持っていないとどこかで駄目になると最初から思っていました。実際、権利を持っていなかったらこんなに長く続いていなかったと思います。