西部:インテリも同じ。自分の昔の原稿を読むとオオカミとして書いている。それがわずかと思うけど少しずつおとなしくなっている。ワンワンに読んでもらうためにね。
村本:いまテレビに残っている芸人の九割九分九厘はスタジオに思想を持ち込んではいけないと思っている。テレビの中には思想なんて1ミリもないんです。正直、政治を滑稽にして笑いたいときはあるけど、タレントはそれを求められていない。
この前、安倍さんがトランプ大統領とゴルフをしたときバンカーですっ転んだ。ところがトランプ氏は無視してそのまま歩いて行ってしまったんですよ。あれを見たときに僕は「日米安保はどうなっているんだ!」と思った。バンカーが北朝鮮で安倍さんがそこで転んだけど、米国は助けなかった。これがまさに今の日米関係。だけどテレビでそれを言おうとすると、抗議やクレームが来るからという理由で止められてしまう。
西部:なるほど。僕とあなたの共通点があるとしたら、ワンちゃんにならざるを得ないけど、少しは犬になってしまったとの自覚を忘れないことかな。いままで結構な数の芸人と会ってきたけど、あなたは根源的な意味で頭がいい。人間は他の動物や植物を食いまくっている以上、頭が良くなる義務があるんです。
村本:西部先生とお会いできてよかった。僕、高校時代に不良に脅された時、ストレスがたまって白髪がいっぱい生えたんです。人間は悩めば白髪が増える。だから、白髪まみれの西部先生は信用できます。
西部:ストレスがあって白髪が増えてハゲになっても女房や子どもには何も知らせず、さも楽しげに老いたオオカミとして暮らしているように見せないといけない。寅さんじゃないけど、男はつらいんだよ。
(構成/ジャーナリスト・桐島瞬、編集協力/吉田愛一郎氏)
※AERA 2017年12月18日号より抜粋