――『4.0』を監訳した早稲田大学商学学術院の恩藏直人教授は、最新理論でもっとも興味深い考察のひとつに「カスタマー・ジャーニー」(顧客の旅)の変化を挙げる。消費者は商品を知ってから、どのようなルートをたどって商品を買うのか。コトラー教授は「認知」「訴求」「調査」「行動」「推奨」とした。

 これまでのジャーニーは、顧客が一人で商品を調べ、どれを買うか決めていました。相談する相手も、家族や友人など少数に限られます。きわめて個人的なルートでした。

 一方でデジタル時代のジャーニーでは、顧客は商品を「認知」したあと、「訴求」される少数の候補に的を絞り、「調査」をします。顧客は互いにネットで積極的につながっており、質問したり推奨したりする関係を築いていることが役に立ちます。

 そして商品購入という「行動」を経て、「推奨」に至ります。大好きなブランドを自発的に「推奨」する。肯定的なストーリーを他者に語り聞かせ、伝道者になるのです。これが別の顧客の「調査」に影響を及ぼします。

 このルートを企業からみれば、SNSをはじめデジタルの道具を活用することで、顧客や市場全体の動向を調査する能力を高めます。個々の顧客には、それぞれの好みに合わせたメッセージを送れます。世界中の顧客に拡散するように願いながら。

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