スマホやSNSなどのデジタル技術が普及し、消費者の行動が変わった。どんな企業が成功を収めたのか。第一人者のコトラー教授が最新理論を語った。
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ある経済圏で、顧客を満足させ、つなぎとめる企業が増えれば、資本主義はよりよく機能します。企業は、こうした顧客の変わらぬご愛顧、あるいは自社ブランドの力を通じて、成功を実感するのです。それには経済的、社会的、感情的といった多様な価値の提供が必要になります。顧客に向けてどのような価値をつくりだし、伝え、提供していくか。これが企業の経営戦略の焦点であり、思考の出発点。一言で表現すれば、「マーケティング」です。
――米国の名門ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のフィリップ・コトラー教授は、そう断定する。「マーケティングの神様」とたたえられるコトラー教授は、経済全体と連動して変化するマーケティングの姿を4段階に体系化した。最新理論「マーケティング4.0」は著書『コトラーのマーケティング4.0』(朝日新聞出版)で詳しく解説されている。
『4.0』を執筆したのは、企業をインターネットやデジタルの時代にすばやく移行させる目的です。これまで、マーケティング情報を伝えるのに新聞、雑誌、ラジオ、テレビといった従来メディアを経由していました。ところがデジタル時代には、フェイスブック、グーグルプラス、インスタグラムなど、いままでにない基盤が登場しました。
しかし、企業では活用が遅れています。多くの企業では、対応は「デジタル専門家」と思われる人物を1、2人採用するのが相場と決まっています。少額の予算を与え、好きにやらせる。仮にうまくいくことがあれば、予算をちょっと増やす……。
それに引き換え、先頭を走る企業、たとえば日用品を扱う米P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)は予算の35%をデジタル領域に振り向けました。
加えてデジタル時代では、単に情報を伝える経路が変わるだけではありません。