私これを聞いて、グッと胸を突かれました。
彼女を気の毒に思ったからじゃありません。そのおばあさんが、彼女にどれほど救われたかと思ったからです。
人は年をとるとできないことが増えていく。楽しみに夢見ていた旅行やお洒落も、お金も体力もなくなれば思うに任せなくなる。自分だけが取り残されたような思いにとらわれる。それこそが、年をとることの一番の苦しさではないでしょうか。
でも本当は、人はお金も体力もなくたって人とつながることができるのです。つまりは自分が誰かの役に立っていると思うことができたなら、どれほど生きる勇気が湧くことか。彼女はおばあさんに救われることで、きっとおばあさんを救ったのです。
人はいろんな形で輝くことができる。そして案外その原動力は寂しさなんじゃないかと言ったら会場から拍手がわきました。みんな寂しいんだ。それでいいんだと思います。
※AERA 2017年12月11日号