日米が“最大限の圧力作戦”を進めている中、11月末にまた北朝鮮がミサイルを発射。緊張が高まっている(※写真はイメージ)
日米が“最大限の圧力作戦”を進めている中、11月末にまた北朝鮮がミサイルを発射。緊張が高まっている(※写真はイメージ)
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 日米が“最大限の圧力作戦”を進めている中、11月末にまた北朝鮮がミサイルを発射。緊張が高まっている。

 もし「最大限の圧力作戦」が核・ミサイル開発を止められないまま不測の衝突が起き、朝鮮半島有事に至れば、約6万人の在韓邦人をどうするのかという問題に直面する。

 国会論戦が本格化した11月20日からの代表質問で、かつて民主党政権で官邸中枢にいた立憲民主党の枝野幸男代表や無所属の会の岡田克也代表が問うた。安倍首相は「様々な状況を想定し、検討している。具体的内容は事柄の性質や相手国との関係もあり控えたい」と語るにとどめたが、その「具体的内容」は心もとない。

 在韓日本大使館が4月に改訂した「安全マニュアル」の想定はこうだ。外務省の危険情報で最高レベルの「退避勧告」が出たら、空港閉鎖前に定期便や政府のチャーター便で脱出。空港が閉鎖されたら自宅などで待機し、「後方の安全地域(通常は南方)」への退避方法について大使館の連絡を待つ。邦人同士で車列を組んだり歩いたりして逃げることもありうる──。

 南北境界に近いソウルから離れ、とにかく南へというわけだが、「考え方が古い」と朝鮮半島問題に詳しい道下徳成・政策研究大学院大学教授は指摘する。

「1980年代前半ごろまでは北朝鮮の陸軍が優位で、南下してソウルを占領する恐れがあった。捕まらないよう民間人は南へ逃げる必要があった」

 だが、韓国が経済発展し陸軍で優位に立つと、北朝鮮は「ソウルを火の海」にすると脅すようになった。つまり、有事の形として、空から砲弾が降り注ぐ可能性が高くなった。

「空港は使えない。車で逃げようにも軍用車両優先で規制され、大渋滞で危険に身をさらす。鉄道には避難者が殺到する。当面は地下などのシェルターのほうが安全だ」と道下氏は話す。

 北朝鮮からの砲撃が小康状態になって逃げる隙ができれば、自衛隊や米軍で日米の民間人を運べないかという話になる。安倍氏は国会で「米国とは協力を進めてきている」と述べたが、これとて簡単ではない。

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