小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
戸籍法のあり方にも一石を投じた青野社長 (c)朝日新聞社
戸籍法のあり方にも一石を投じた青野社長 (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】戸籍法のあり方にも一石を投じた青野社長

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 サイボウズの青野慶久社長が、国を相手取って夫婦別姓訴訟を起こすと話題になっています。仕事では旧姓を使用している青野さんは、結婚して妻の姓に変えたことにより、株の名義変更に300万円かかったそうです。

 夫婦同姓を定めた民法750条の違憲性が問われた訴訟では、2015年に最高裁が合憲であると判決を下しました。今回、青野さんは戸籍法に注目し「日本人と外国人の結婚・離婚や日本人同士の離婚では同姓か別姓かを選べるのに、日本人同士の結婚では同姓しか選べないのは『法の下の平等』を定めた憲法に違反する」と主張。青野さんの代理人である作花知志弁護士は「戸籍法を改正して、旧姓使用を認めるべき」と述べています。

 戸籍は“夫婦と、これと姓を同じくする未婚の子ども”によって編成されるので、結婚したら夫婦が一つの姓で新しい戸籍を作り、筆頭者を決めます。同じ田中さん同士の結婚でも、戸籍の筆頭者となったほうの“田中”に揃えることになるのだとか。何やら昔の家制度の名残を感じます。

 青野さんが指摘するように、離婚しても元のパートナーの姓のままの人もいますし、旧姓に戻る人もいますよね。

 外国人は戸籍がないので、結婚したら日本人が新たな戸籍を作りその筆頭者になって、外国人と結婚した事実を記載します。その際には、夫婦それぞれの姓が記載されます。もし日本人が外国人パートナーの姓を名乗りたいときは、戸籍届出窓口に届け出れば認められます。どちらも選べるのです。確かに「日本人同士の結婚」だけが同姓縛りなのはおかしいですね。

 別姓の選択を可能にするために戸籍法改正を求める青野さんらの訴えは、戸籍制度のあり方にも問いを投げかけています。夫婦単位で個人の身分関係を登録する戸籍制度は、非婚化が進み、パートナーシップや生き方が多様化した今の日本では、もう無理があるのかもしれません。

AERA 2017年11月27日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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