ChatGPTの台頭で、AIにさらなる注目が集まっている。生活のあらゆる場面でAIの台頭が続く中、私たち人間はどんな能力をつけていけばいいのか?「探究型学習」の第一人者である矢萩邦彦さんは、著書『自分で考える力を鍛える 正解のない教室』(朝日新聞出版)の中でAIと人間が共存していく方法を提案している。本から抜粋して紹介したい。
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AIと人間はどこが違うのでしょうか? ぼくが子どものころは、コンピューターは近未来を感じる存在でした。しかし、いまやパソコンが使えることは常識になり、スマホがなければ生活にも仕事にも不便を感じるまでになっています。「あると便利」から「ないと不便」に感覚が変わるとき、それは、その社会の基盤(インフラ)に組み込まれはじめたと考えられます。
このあと「ないと生活できない」段階に達すると、都市における電気・ガス・水道・通信のように社会や経済活動をするうえでの生命線(ライフライン)になってきます。AIやロボットはまだ「あると便利なもの」ですが、近い将来「ないと不便なもの」になり、しばらくはその段階が続くと考えられます。
ではAIやロボットがインフラになった社会では、何が便利になって、どんなリスクが考えられるでしょうか?
技術が進歩して、それが社会に浸透していくということは、社会全体としては進化しているといえます。一方で、AIやロボットに仕事をうばわれてしまうのではないか、という意見もありますが、新しい技術というのはもともとあった仕事を楽にしたり、精度を上げたり、先に進めたりすることに意義があります。AIやロボットが仕事をうばうのではなく、代わりにやってくれる、あるいは手伝ってくれるというふうに前向きに考えなければ、社会は停滞してしまいます(もちろん「原子力エネルギー」に代表されるように、リスクを抱えるくらいなら停滞したほうがよいという考えもありますが)。