ソチ冬季五輪で銀メダルを獲得したスノーボード女子アルペン・竹内智香選手が「AERA」で連載する「黄金色へのシュプール」をお届けします。長野五輪を観て感動し、本格的に競技をスタート。2018年2月の平昌五輪では念願の金メダル獲得を目指す竹内選手の今の様子や思いをお伝えします。
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先週から、約1カ月間の予定でアメリカ合宿に来ています。夏の合宿地だったニュージーランドはここ数年行き始めた土地ですが、アメリカは16歳の時から継続して合宿地として訪れています。コロラド州のデンバーにある山は、まだ雪が少ない時期。そのため、10月上旬から人工雪を降らせ、20日ごろに積もっている状態に仕上がります。
スキーやスノーボード選手なら、どこでも優先的に良い環境を提供してもらえるわけではありません。特にいろいろな国や地域で合宿をするとなると、その土地の人々との関係性がすごく大切になってきます。ニュージーランド合宿の時も地元の人々に支えられたという話を以前に紹介しましたが、今回のアメリカも同じです。ここにもお世話になっている日本人家族がいて、毎年来る私の荷物をずっと保管してくれています。それはかなりの量で、日用品から自炊で使うキッチン用具までいろいろ。米国でも「帰ってくる」みたいな感覚になりますね。
さらに、今回の合宿に先立ち、スキー場の関係者が6月に来日していたので、20年来毎年素晴らしい練習環境を提供していただいたお礼として、2週間観光案内をしました。鎌倉など各地に連れていき、スポーツが好きだということだったのでJリーグの試合や東京ドームでの野球観戦にも行きました。その結果、今回の合宿に向けてさらに最高の環境を提供してもらえることになりました。1カ月の間、毎日常に二つのコースを滑れるようにしてくれて、休日の急な対応も臨機応変にしてくれるなど、普段の彼らのルールよりもかなり柔軟に使わせていただけることになりました。
こういう環境も競技者だから当たり前の待遇だという考えは一切ありません。良い環境を得るためには、普段の自分の行動や努力が必要なのは意識していますし、感謝の気持ちを大切にし、マナーを守ることも重要。そうして母国ではない国でもこういった環境を得ることができるのはとてもありがたいことです。
アメリカ合宿もニュージーランド合宿と同様に、気を使わずに練習に集中できるメンバーで日々を過ごしています。ここから約1カ月間、滑りに磨きをかけた後は、12月からいよいよW杯の試合が始まります。そしてそれは来年の平昌五輪に向けたスタートでもある。頭も体も、徐々に本番モードに切り替わっていく段階に入っていきます。(構成・西川結城)
※AERA 2017年10月30日号