間近に迫った衆院選を、小説家・高村薫さんはどう見るのか。インタビューで聞いた。
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今回の総選挙をメディアは3極が争う構図と報じていますが、違います。小池百合子代表が自民との連立に言及した時点で、希望は完全に「第2自民党」になった。選挙協力する維新は、元々官邸と極めて近い関係にある。自公プラス希望・維新は右派、そして、瓦解した民進から希望に合流しなかった立憲民主は枝野幸男代表を除き明確に左派です。中道がない2極構図になった。私も含めて有権者の概ね半分は、政治的には穏健な中道のはずですが、その人たちが票を投じる先がない。
小池さんはとことん権力ゲームが性に合っているのでしょう。いろんな政党を渡り歩いて権力ゲームの中に手を突っ込んで、機敏に先端に躍り出てきた。一方で、政治は自分のステージを上げるための道具であって、ポジションをつかんだ後に具体的に何をしようという信念は感じられない。原発ゼロなのに再稼働OKとか、花粉症をゼロにするとか選挙公約も意味不明です。都知事就任後も、五輪施設の見直しや、築地市場移転問題では築地も豊洲も生かすと言ってみたり、掲げた公約は中途半端。極めつきは、築地と豊洲併存の検討記録が残っていないことを、公約でもある情報公開方針と矛盾すると追及されると、政策決定者たる自分は人工知能だから文書が不存在なのだと言い募った。
私が有権者の政治意識で気になるのは、すぐに忘れてしまうことです。昨夏の都知事選で大きく下がった自民党の支持率は、9月には持ち直した。森友・加計問題も、野党が求める臨時国会召集の要求を2カ月放置し、ようやく召集したと思ったら冒頭解散。この間、これからは丁寧に説明すると頭を下げた安倍晋三首相は、結局それもしなかったのに、支持率が40%台に回復してしまう。