CGの制作は基本、自宅で行うという三宅智之君。「自分の思っている世界がどんどん作られていくのがすごく面白い」(撮影/加藤夏子)
CGの制作は基本、自宅で行うという三宅智之君。「自分の思っている世界がどんどん作られていくのがすごく面白い」(撮影/加藤夏子)
この記事の写真をすべて見る

 今年もノーベル賞が発表され、異能と天才たちに視線が集まっている。だが、日本にも知られざる若き異能たちがいる。その一人、世界を驚かせる高校生CGクリエイターに注目した。

 CGを操る異能高校生だ。

「模型は限界がありますが、CGだと自分が想像した世界をいくらでも作れます」

 早稲田大学本庄高等学院(埼玉県本庄市)2年の三宅智之君(17)。昨年2月、近未来の地球をCGで描いた映像作品「2045」をユーチューブにアップし話題を呼んだ。同年10月、ICT(情報通信技術)分野で独創的な技術開発に取り組む人を支援する総務省の「異能(Inno)vation」に最年少、未成年で初めて選ばれた。

 幼稚園の頃から工作好きで、CGに興味を持ったのは小学1年時。映画館で「ALWAYS 三丁目の夕日」を観て特殊効果に感動し、続編でゴジラが東京の街を破壊するシーンを観て“破壊”に目覚めたと笑うが、同時にCGの魅力にも取りつかれた。

「模型とCGと現実の三つを組合わせるVFXと呼ばれる技術で作った、超リアルな世界に感動しました」

 以来、専門書で独学して技術を磨き、中学2年の後期から1年間かけて自主研究の授業で仕上げた作品が「2045」だ。

 2045年はコンピューターが人間の脳を上回るシンギュラリティ(技術的特異点)が訪れるといわれる年。その後の世界はすべての物質がナノサイズのロボットで作られるという設定で、この技術センターがハッキングされ、世界が破壊されていく──。5分10秒のストーリーは、まるでハリウッド映画のようなスケール感と映像効果で反響を呼び、140万回近く再生されている。

 アイデアは、思いついた時にメモを取る。学校生活との両立で忙しい日々だが、新作にも着手した。舞台は人類がいなくなり廃墟と化した東京。作る際に心がけるポイントは、「アニメーションというより実写ライクなCG」だ。壊れた建物や傾いた電柱など一つ一つを骨組みからCGで作るという根気がいる作業だが、飽きることはない。映像技術は数年単位で変わっていく。が、常に最新の映像技術に携わっていたいと話す。

「映像で世界を驚かせたい」

 17歳。若者の視線は世界を向いている。(編集部・野村昌二)

AERA 2017年10月16日号より抜粋

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら