●積み立てで家計スリム化

 多くの人が心配する老後資金。いったいいくらを目標に積み立てていけばよいのだろうか。横山さんは、この質問に明確な答えはないという。

「3千円でも1万円でもいいので、とにかく毎月の家計から余らせて積み立てに回すしくみを作ることが重要」

 積み立てのメリットは、資産形成だけではない。毎月、積み立てに回す額を捻出するには家計を絞る必要があり、これまでどんぶり勘定だった人でも自然と意識が向くようになる。それが、家計からムダを排除し、スリム化につながるのだという。

「家計をダウンサイジングできれば、生活費が少なくなり老後に必要な資金も減らすことができます。積み立ては二重の意味で、老後の資金対策になるのです」(横山さん)

 冒頭に登場したAさんの友人Bさん(43)は、主に先進国と新興国の株を対象にしたインデックス投信の積み立てを11年続けている。これまで約470万円を投じ、200万円以上の利益が出ているという。

「リーマン・ショックの時期は、ネット証券の口座を確認するたびに評価額が減るので見るのも嫌でしたが、やめずに続けていて良かった」(Bさん)

 ちなみに、毎月3万円を20年積み立てて5%で運用できれば、720万円の資金が1233万円にまで増える計算だ。家計のダウンサイジング効果も合わせれば、老後対策としての実質的な効果はもっと大きい。積み立て投資は最初に銀行口座から引き落としで投信を購入する設定をしてしまえば、あとはほったらかしでOKだ。まずは3千円から、始めてみてはいかがだろうか。

(ライター・ファイナンシャルプランナー・森田悦子)

AERA 2017年10月9日号