28日召集の臨時国会では、首相の所信表明演説もなしに「解散宣言」が行われる予定で、早期の臨時国会召集を求めていた野党側は一斉に反発している。国会論戦を避け、北朝鮮情勢が緊迫化する中での「解散」ではその意義も問われる。
「憲法が明示的に解散権の行使を想定しているのは、内閣不信任案が可決された場合ないし信任決議が否決された場合の憲法69条のみです。しかし、解散の大義があれば内閣の判断で解散権を行使できる7条解散が実務上定着し、最高裁も7条解散権の合憲性の判断を避けているのです」(木村教授)
●解散は意味がない
憲法7条には「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、国事に関する行為を行ふ」とあり、その3項に「衆議院を解散すること」がある。「首相の専権事項」が憲法に明記されているわけではない。
「内閣に自由な解散権を与えると、例えば政権に不利な統計が発表される前の段階や、野党の選挙準備ができていない段階など、与党に有利なタイミングを選んでの党利党略での解散が横行します。このため、恣意的な解散に制限を与える動きが世界の議会で起こっている。例えば議院内閣制のイギリスでは、2011年に解散権の行使を内閣不信任ないし下院議員の3分の2以上の合意がある場合に限定する法律が成立しました」(同)
日本でも05年の「郵政解散」、そして任期の半分を残し、大義なき解散と言われた前回14年の「アベノミクス解散」をきっかけに、「解散権の制限」に関する議論が起こったが、現行憲法には解散権をしばる規定はない。
木村教授はこう指摘する。
「憲法7条に『国民のために』という言葉がある。解散は国民のためでなければならない。そのためには、今回のような目的のはっきりしない解散ではなく、国民に選択肢がきちんと示されなければ意味がない」
だが、吹き荒れる解散風は止まらない。目的が曖昧な選挙で国民の無関心が広がれば、戦後最低の投票率だった前回の衆院選同様、組織票に勝る自民、公明両党に有利に働く。一方、民進党のホープだった山尾志桜里衆院議員の不倫疑惑報道や、同党議員の離党劇で迷走のイメージが強かった野党だが、ここに来て立て直しが急ピッチで進む。