小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 日本で公開中の映画「ワンダーウーマン」。一足先にオーストラリアで見ました。期待値ゼロで劇場に座り、出てきたときには息子たちと私は大満足。アクション映画が苦手な夫は「戦闘シーンが多すぎた」と不満げだったので、またかすかに夫婦の溝が深まった気が……。いや、それくらい作品が面白かったのです。

 親子で鑑賞しようと思っている人も多いでしょう。男子にも女子にも見てほしいです。ただし夫のように戦闘ものが苦手な人は要注意。私も殺戮シーンが多い映画は基本的に好きではないのですが、今作はその設定が優れた比喩となっていて、楽しめました。

 中3と小6の息子たちはアクション映画として堪能した模様。彼らは女性が主人公であることには特に反応していなかったけど、もしあなたのお子さんが「えー女が戦うのー。スーパーマン女版でしょ」と、期待値ゼロだった私と同じような先入観にとらわれているのなら、なおさらぜひとも見てほしい。女神の国から第1次世界大戦中の世界にやってきた主人公のダイアナを演じた主演のガル・ガドットは、イスラエル国防軍の戦闘トレーナー出身だけあってアクションシーンでの身体の動きにキレがあり、女の割にとか男並みに、なんて考えさせません。

 私が今作から得た啓示をざっと並べると、「親の話を真に受けるな」「仮想敵はあくまで仮想」「世界を救うのも今日を生き延びるのも一大事」「『男女』『善悪』の二項対立で世界を捉えている限り、私たちは皆、永遠に世間知らずである」……すでに深く優れた批評がたくさんなされているので、興味のある方はぜひ検索を。

 見終わった後に、「男らしさ・女らしさ」「いい人・悪い人」について話してみるのもおすすめです。「暴力ってなんだろう」という話も。割り切れない後味が残れば、高い映画代の元は十分取れたと言えるでしょう。

AERA 2017年9月11日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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