
「コンビニ百里の道をゆく」は、40代のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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ローソンは「ひとり親家庭支援奨学金制度」を創設し、7月1日から店頭募金の受け付けをスタートしました。全国の中学3年生から高校3年生までの400人のみなさんに、返還不要の奨学金を最長4年間、1人につき月額3万円ずつ支給する予定です。運営資金は店頭での「“マチの幸せ”募金」のほか、ローソンの拠出金などです。
厚生労働省によると、過去25年間で母子家庭が1.5倍になりました。就業している母子家庭の52%で、家計の担い手である母親は非正規雇用。平均年間就労収入は181万円だといいます。
こうした家庭では、お子さんが家計を心配して進学をあきらめるケースも多いようです。しかし、育った環境で受けられる教育に差がある社会は、健全とは言えません。こんな状況を少しでも改善したい。奨学金制度は、そんな思いで始めました。
きっかけになったのは、2011年から実施していた、東日本大震災で被災された東北3県(岩手・宮城・福島)の子どもたちを対象とした奨学金制度「夢を応援基金」です。すでに800人を超える方々が卒業し、奨学生一人ひとりから多くの感謝の声を頂戴しています。
どんな環境にあっても、子どもたちには学びたい欲求があるということを、改めて重く受け止めました。夢をあきらめることなく進学し、卒業した喜びや充実感は何ものにも代えがたい。若者は国の宝です。
「会社」を逆さまにすると、「社会」になります。経営者は、企業は社会の一員であることを忘れてはならないと思っています。そもそも社会活動の一環としてビジネスをしているのですから、環境事業にしろ教育支援にしろ、社会への「還元」は必須。企業で働く社員のモチベーションにも、つながるはずです。
加盟店のみなさんと一緒にマチマチで良い仕事をして、仕事でも支援でも社会に貢献していきたいと思っています。それこそが、「社会人」です。
※AERA 2017年8月28日号

