前出の奈良氏はこう唱える。

「経済大国としての特権を享受できなくなったいま、行われようとしているのは、後ろ向きで自己満足な『神話』への逃避です。近代の出発点として、その功罪をいま一度、総合的に捉え直す作業に取り組まないと、心地よい内向きの神話にのみ込まれてしまいます」

 内閣官房の関連施策推進室は、「多くの人に(国の)将来を考えてもらうきっかけになれば、と考えています。(「明治」をめぐる評価については)政府として特定の人の意見が正しいか、間違っているかまで踏み込むことはありません」としている。

 加納さんは言う。

「来年は平成最後の年になり、歴史への関心が高まるでしょう。そうした中で政府主催の『明治150年』記念行事が行われると、『明治』以後の歴史を肯定一辺倒に染める形で記憶が上書きされる恐れがある。一方的な歴史認識が拡散・定着しないよう注視する必要があります」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2017年8月14-21日号

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