
「趣味は何ですか?」。会話の糸口に聞かれることは多いもの。だが、これといって趣味がないと、この質問はプレッシャーだ。SNSにはリア充趣味に興じる様子がてんこ盛り。趣味界は、なんだかんだと悩ましい。インスタ映えを重視して「趣味偽装」する人、趣味仲間から抜けられずに苦しむ人もいるらしい。AERA 7月31日号ではそんな「趣味圧」の正体を探る。
紆余曲折、疾風怒濤の人生を過ごしてきた趣味の達人たちにもインタビュー。その中から、様々なブームを仕掛けてきた、みうらじゅんさんの趣味論を紹介する。
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「ゆるキャラ」や「仏像」など色々なものを紹介してきて「趣味を仕事にできていいですね」と言われることもよくありますが、僕は小さいころから趣味という意識はまったくありませんでした。小1の時に怪獣写真のスクラップ帳を始めた瞬間からもう、誰かに見せることが前提。一人っ子で、なるべく遊びに来た友達に家にいてほしいから、こういう記事をこれくらい集めたり組み合わせたら面白いだろうなという「編集長」の視線でやっていたんです。
今やっていることも、その延長線上。例えば各地のもらったら困る土産物(いやげ物)やゴムヘビを収集していますが、好きだから、趣味だから集めているわけじゃない。これを集めて、まとめたら面白いんじゃないか、みんなが喜ぶんじゃないかと完成形を考えて集めている。みんながいらないと思うものを集めてエンタメにするためには、「無駄な努力と無駄な量」が大事。興味のない人を振り向かせるまでの作業は、一種の修業です。趣味のように自己満足では終われないし、趣味では食えません。
趣味の人はその趣味について自分の意見を熱く語ったりして、たいてい聞いていてもつまらない。僕はどうやって自分の伝えたい対象を面白く人に伝えようか考えているから、話をするときは自分という存在をなるべく関与させないよう、極力消そうとしています。自分を前面に押し出してしゃべっているように思われるかもしれませんが、サングラスをして人前に出ているみうらじゅんというものは一種の「キャラクター」でしかないんです。