「北島さんにできたんだから、人間ならできるってことなんで」
7月24日号のAERA表紙に水泳選手の渡辺一平が登場。世界選手権で世界新の更新を狙う193センチの大型スイマーは、北島康介に憧れて水泳を選んだ。大器の伸びしろは無限大だ。
「布団の中で目を閉じたら金メダルが揺れているのが見えた」
昨年のリオデジャネイロ五輪男子200メートル平泳ぎ決勝前夜のことだ。その日の準
決勝は五輪新で1位通過。しかし、翌日の決勝は6位に終わった。
「決勝はスタートして気づいたらタッチしていた。緊張してたんですね。メダルをつかんでから眠ればよかったと後悔した(笑)」
うっぷんを晴らすかのように、今年1月の東京都選手権で世界新。だが、満足はしていない。五輪新も世界新も狙って出したものではないからだ。
「世界選手権は狙う。僕らしい大きくのびやかな泳ぎで最初から突っ込む」
実は平泳ぎでは、ストロークを大きくしつつ飛ばすのは難しい。急ぐと素早くかきたくなるからだ。
「でも、北島さんはそれをやって世界新を出した」
アテネ五輪での北島の活躍に強く憧れた。途中バスケットボールとの二択で迷ったが、水泳を選んだ。その後の歩みは、有名クラブ育ちの北島とは正反対だ。
所属したのは無名のクラブ。ボランティアコーチの指導を受け、小5で出場したエリートの登竜門・ジュニアオリンピックでは予選落ちして、思い出作りに東京ディズニーランドへ行った。高校までは無名だった。
ところが、クラスで真ん中程度だった身長が中学から高校にかけて35センチも伸びると、肩甲骨とひじの天性の柔らかさが相まって一気に才能が開花した。長い腕と大きな可動域で鬼に金棒。身長を測ると調子がわかるという。
「誤差は1、2センチですが、高いと調子がいい。体が緩んでつまりがないのかも」
一平の名の通り、平泳ぎで世界一へ。リラックスがカギだ。(ライター・島沢優子)
※AERA 2017年7月24日号