ヴァイオリニスト・諏訪内晶子が芸術監督を務める「国際音楽祭NIPPON」。音楽家として充実期を迎える諏訪内の意気込みは。
諏訪内晶子が芸術監督を務める「国際音楽祭NIPPON」が今年で5回目を迎えた。クラシックの音楽祭には地名や会場の名前がつくことが多く、「NIPPON」という大きな冠がついているものは珍しい。
「この音楽祭は本拠地が決まっていません。毎年違う土地をまわるのが特徴なので、名前をつけていないんです。大変ですけれど、あえて毎年転々としながらやっていこうと考えました」
今年は東京、名古屋のほか東日本大震災の被災地である岩手県久慈市をまわる。7月4日から後半のプログラムがスタートする予定だ。
●音楽学ぶ若者も参加
1990年に諏訪内がチャイコフスキー国際コンクールで優勝した際、ピアノ部門で優勝したボリス・ベレゾフスキーとの二重奏、さらにチェロのマリオ・ブルネロを加えた三重奏のリサイタルのほか、レナード・スラットキン指揮のデトロイト交響楽団とのコンサート、谷川俊太郎の詩を子どもたちが朗読して室内楽と共演する「言葉と音楽」のコンサートなど盛りだくさん。ヴァイオリニストを目指す若者向けのマスタークラスも開催される。久慈市のコンサートには昨年に続き、桐朋学園の室内楽アンサンブルやマスタークラス参加者から選抜されたソリストら、音楽を学ぶ若者たちも参加することになっている。
「これまで宮城県仙台市や気仙沼市に行きましたが、被災者の方々も未来を向いている若者が来てくれることを、とても喜んでくださいました」
世界を飛びまわって演奏活動を続けながら、芸術監督として音楽祭の企画や人選、さまざまな打ち合わせや手配を行う。
「ソリストとしてやっているだけでは知り得なかったこと、感じ得なかったことをたくさん経験でき、大きな充実感を得ました。今年はベレゾフスキーさんとのリサイタルで、藤倉大さんに委嘱した新作も演奏しますし、デトロイト交響楽団の演奏会では武満徹さんの『遠い呼び声の彼方へ!』やコルンゴルトの協奏曲を取り上げます。どれも素晴らしい曲ですよ」