

地に落ちたイメージを回復させて、業績も上向かせる……。これまで、多くの企業が直面し、その実現に腐心してきた。これは、個人の場合でも同じこと。落ち込んだ底が深ければ深いほど、復活には時間がかかる。AERA 2017年7月3日号では、「どん底からの脱出」と銘打ち、見事V字回復した企業を大特集。そのとき企業は、個人は、何を考え、どう振る舞うべきなのか。当事者たちの話を聞いた。
「V字回復と、その先にある持続的回復に向けて、確かな手ごたえを感じている」。23日、東京都港区で開催された株主総会で、三菱自動車の益子修社長兼最高経営責任者(CEO)はこう強調した。
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先月中旬、「アウトランダー」などを生産する三菱自動車の主力生産・開発拠点である岡崎製作所(愛知県岡崎市)を、カルロス・ゴーン会長が初めて視察に訪れた。
パーテーションの代わりに、白木のすだれのような間仕切りが天井から下がる、明るい一室。正面のディスプレーを取り囲むようにして、赤や黒の椅子がランダムに並び、作業着を着た社員ら十数人が集まっている。
「私たちの部のパフォーマンスを上げる取り組みをご紹介します」
ディスプレーの前に立った中堅の男性社員が、少し緊張した面持ちで説明を始めた。その数メートル先、最前列の中央に座るのは、ゴーン会長だ。隣の女性が逐次、通訳をして伝える。
「そうですね、素晴らしい取り組みです」
●変革とは成長すること
社員が発表を終えるとゴーン会長はそう言い、一息つくと厳しい表情で、
「だが、会社の変革には具体的なビジョンが必要です。それが、世界目標販売台数125万台という数字。変革とは成長することなのです」
と、檄を飛ばした。
この場では、若手からベテランまで、数組の改革チームの代表が、組織改革の進捗についてゴーン会長に報告をした。使い慣れない英語で発表する社員から、日本語で発表する社員も。内容も、マネジメント方針の改革からトイレの改築までさまざまだった。この部屋も、「改革」のひとつとして改装して作られたという。