●自民総裁で凱旋は?

 元アナウンサーの女性(40)は「小池都知事に『やりたいことがあるなら自分でやったほうが早い』と背中を押された」と激戦区から立つ。無所属の現職も都ファ推薦で出ており、「選挙区ただ1人の新人。組織もないし街頭演説を重ねるしかない」と語る。

 一方、区議や都議経験者も都ファに集う。推薦(公明党以外)を含めると最多は民進党離党組で18人、自民からも11人いる。

「知事と都議会多数派が連携すればできることがぐっと増える」(元民進都議の候補者)

 選挙区によって都ファに対する公明党や連合の協力状況は全く異なる。ある候補者は、

「バックボーンがバラバラの人が集まるぶん、意見の調整は大変になりそうだ」と危惧する。この候補によれば、候補者は都議会都ファの本部から「国政についてはなるべくコメントをしないように」という方針を伝えられていると言う。

「国政のテーマで意見がバラバラになり結束が緩んだということも過去にあったので、その失敗を繰り返さないようにしているのだと思います」

 国政と言えば思い出されるのが、小池氏が政治家デビューを果たした「日本新党」だ。1993年に都議選で議会第3党に躍進し、その後衆院選で35議席を獲得、自民党下野の原動力となった。自民党を離党した若狭勝氏や民進党を離党した長島昭久氏ら、国会議員も少しずつ小池氏の下に集まりつつある。国政進出はあり得るのか。

 日本新党出身の海江田万里元民主党代表は、「日本新党は最初から国政を見据えて準備していた政党。都ファとは違う」と否定する。また別の日本新党出身者は「小池さんは国政を見ていますよ」と言うが、それは都ファを発展させた形ではないとも語る。新党を持続させることの難しさを一番よく知っているのも小池氏だからだ。

「特に野党は、安全保障政策について考えがまとまらないと党が割れるほどの対立になる。その点、自民党はまとまりがある」

 自民党総裁としての凱旋──そんなシナリオもあるのでは、と彼は言う。だがそれも、小池氏の人気で選挙戦を圧倒することが前提だ。(編集部・福井洋平)

AERA 2017年7月3日号

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