犬は「フレンドリー」だけど、猫は「ツンデレ」。猫好きにはたまらないその魅力が変わるかもしれない。人工増殖と給餌が野生を奪い、「犬っぽい猫」が増えているのだ。2017年は猫が犬の飼育頭数を上回る可能性が出てきた。猫ブームの勢いが止まらない中、ペットの世界に何が起きているのか。AERA 2017年6月19日号では、ペットを大特集。「犬っぽい猫」が増えているのだという。ペットの世界に起きている異変を取材した。
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都内のとあるマンションの一室。飼い主の女性(30代)が帰宅すると、
「アンアン」
と鳴いて出迎えたのは、犬ではなく猫のるりお(6)だ。生後間もなく河川敷で捨てられていたのを拾われてから、ずっと飼い主と一緒に室内で暮らしている。
お気に入りの場所は、パソコンの裏。作業中の飼い主をずっと見守る。
「るりちゃん」
と飼い主が声をかけると、すぐに寄ってくる。ひっくり返って、前脚で後頭部を指して、「ここを撫でろ」と催促。
飼い主が入浴中には脱衣所までついてきて見守っているので、自由に行き来できるようにドアは開けている。女性は確信する。
「るりちゃんの前世は犬です」
るりおは、呼べば近寄り、撫でられたがり、飼い主とのコミュニケーションが大好きだ。
飼い主に対してどこまでもフレンドリーな犬に対して、“ツンデレ”な猫。人との積極的なコミュニケーション行動は犬の特徴で、これまで猫ではあまり見られないとされていた。
ところが最近、るりおのような年中愛想のいい“犬っぽい”猫の姿がSNSなどを中心に多く見られるという。まさか、猫が「犬化」しているのか──。
●ツレナイ猫と懐く犬
従来、猫は人に対してどのように振る舞う動物と思われてきたのだろう。実験室で扱いにくいため、犬と比べてデータが少ないが、最近では猫人気もあり、猫と人のコミュニケーションに関する研究が増えている。
「猫は人の表情を区別したり、飼い主の注意状態をちゃんと理解したりしていても、それに対して積極的に反応しないことが多いので、ツレナイように見えます」
と、猫と人のコミュニケーションの研究に取り組む、武蔵野大学講師の齋藤慈子(あつこ)さんは説明する。齋藤さんらの研究でも、猫は飼い主の声を他人の声と聞き分けているが、それに対して鳴いたり、しっぽを動かしたりするなどして積極的にコミュニケーションをとろうとしないという結果が出ている。名前を呼ばれたらすぐにしっぽを振って近寄っていく犬とは対照的だ。