犬は「フレンドリー」だけど、猫は「ツンデレ」。猫好きにはたまらないその魅力が変わるかもしれない。人工増殖と給餌が野生を奪い、「犬っぽい猫」が増えているのだ。2017年は猫が犬の飼育頭数を上回る可能性が出てきた。猫ブームの勢いが止まらない中、ペットの世界に何が起きているのか。AERA 2017年6月19日号では、ペットを大特集。
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止まらない猫ブームの勢い。犬の飼育頭数が減少する中、猫人気は相変わらずだ。2017年は猫が犬の飼育頭数を上回る可能性が出てきた。
長らく犬が君臨してきた「ペット王者」の座に、猫が肉薄している。
一般社団法人ペットフード協会の調査によると、2016年の猫の推計飼育頭数は984万7千頭。これに対し、3年前までは1千万頭を超えていた犬の飼育頭数は987万8千頭と年々減少しており、犬と猫の差が縮まってきている。
この背景について、猫ブームがもたらす経済効果「ネコノミクス」を約2兆3162億円と試算した関西大学名誉教授の宮本勝浩さんは、こう分析する。
「毎年のワクチン接種や、毎日の散歩が必要な犬に比べると、猫は飼い主の手間や飼育にかかる費用が少なく済みます。少子高齢化が進行し、単身世帯や夫婦だけの世帯が増える中、少ない負担で癒やしを与えてくれるのが猫なのです」
ネコノミクスは飼い主の支出だけにとどまらない。たとえば、和歌山電鉄貴志川線の名物猫「たま駅長」は、和歌山県の観光に40億円もの経済効果をもたらしたとされる。そのほか、猫の写真集や本、グッズの売り上げなども含まれる。「自分で飼うほどではない」層からも、猫は犬よりも共感を集めやすいのだという。
「犬の場合、犬種によって好みが分かれて人気は分散しがちですが、猫好きな人々はどんな猫でも可愛いと思う傾向が強い」(宮本さん)
●「ネコの手を借りるか」
ネコノミクスは不況にあえぐ出版業界も潤しており、昨年末に発行した小誌の臨時増刊「NyAERA(ニャエラ)」は大反響を得た。そのほか、女性自身の「ねこ自身」、ザテレビジョンの「ザテレビニャン」、LDKの「ネコDK」など、人気雑誌が次々と「ネコ増刊」を出す中、業界誌までもが猫特集を組んで話題を集めた。