戦闘機F35Aの「国内生産」が始まった。中国機の領空接近や北朝鮮のミサイル発射が続く中、安倍晋三首相が「我が国の防衛に絶対必要」と語る最新鋭機。損得勘定は──。
6月5日、名古屋郊外の三菱重工小牧南工場で開かれたF35Aの「国内生産初号機お披露目式」。格納庫のような会場で正面の壁が開き、機体が現れた。日米両政府や製造元のロッキード・マーチン社、組み立てた三菱重工の関係者ら約300人が総立ちで拍手した。
ハイランド臨時代理米大使が、「航空宇宙、防衛は日米の大きな貿易分野だ。F35は我々の深い通商と安全保障関係の証しだ」と祝辞。若宮健嗣防衛副大臣も「かつて愛知県の三菱重工の工場で零戦が造られた。戦火を交えた両国による最新鋭戦闘機の共同生産で同盟が強固になると確信する」と語った。
●国内生産で技術維持
F35Aの“国内生産”をめぐっては曲折があった。米国中心の国際共同開発に、日本が乗り遅れたからだ。日本政府は2012年度以降に42機を買うが、単なる輸入では防衛産業が衰えるため米国と交渉。完成品輸入は12年度の4機のみとし、残り38機は国内で組み立て、エンジンやレーダーの部品も国内で作ることにこぎ着けた。
ただ、米国製部品の輸送費などがかさむ国内生産はお高い。13~17年度の24機の取得費は1機平均163億円で完成品の1.7倍。17年度予算では6機で880億円と自衛隊の航空機購入費の25%だ。42機を30年間使えば維持費を含め2.2兆円かかると防衛装備庁はみる。
それでも国内生産にこだわるのは今の空自戦闘機にない性能があるためだ。レーダーなどに映りにくいステルス性に加え、敵機位置が陸海空の味方とデータリンクし操縦席で示される。中ロもステルス機開発を進める中、「First Look、First Kill」(先に敵を見つけ、たたく)の能力勝負に欠かせないと空自はみる。
空自戦闘機では、F2は領海や領土への侵攻に対する反撃を支援し、F4とF15は領空に無許可で近づく航空機に緊急発進をかける。F4後継機として導入されるF35Aは同じ役割を担うとされるが、今年度からの配備先は主に青森県の三沢基地。そこから日本海の向こうをどうにらむか、ステルスだけに空自関係者の口は堅い。