坂本龍馬はADHD(注意欠陥・多動性障害)だった──。そんな説がある。
ADHDとは、先天的な脳機能不全による発達障害の一つ。最近の研究では、特定の遺伝子が重複して存在すると引き起こされることがわかってきた。ADHDの主な特徴は(1)注意欠陥、(2)多動性、(3)衝動性の三つ。欧米では、成人人口の4%程度が当てはまるとの調査もある。
では、龍馬がADHDだといわれるのはなぜか。
『戦国武将を診る』の著書もある、日本大学医学部の早川智教授は言う。
「龍馬がADHDだったという証拠は残っていません。ただ、診断基準を当てはめるとADHDだろうと推測できます」
●よく居眠りをしていた
オランダの「DIVA Foundation」が作成した、「成人用ADHD診断面接(DIVA)」によれば、「課題に集中することが困難」「指示に従えない」「落ち着きがない」……こうした状態が「しばしば」見られた場合に該当するという。
早川教授は、これらは龍馬の記録に一致すると話す。
「龍馬は塾を中退し、脱藩を繰り返すなど、組織の秩序になじめなかったと見られます。また、遠慮がなく、人の話を聞かずによく居眠りをしていたという同時代人の記録もあります。こうした言動から、ADHDだった可能性はかなり高いと思います」(早川教授)
一方で、凡人の発想を超え、歴史に偉大な足跡をしるした人が少なくないのもADHDの特徴。たとえばレオナルド・ダ・ヴィンチやモーツァルト、ピカソ、エジソン、チェ・ゲバラ……。彼らもADHDだったといわれる。
龍馬もそうだ。
色々なことに興味と好奇心を示し、非常に創造的だった。たとえば、犬猿の仲だった薩摩と長州をまとめ薩長同盟を結ばせ、大政奉還を献策し、奉還後は旧徳川将軍家も取り込んだ諸大名による議院内閣を構想した。既成の概念に縛られない自由で斬新な発想は、高い知能の裏づけといえる。