レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字で「LGBT」(性的少数者)。企業はこぞって多様性の重視を喧伝、制度整備が進む自治体も増えつつある。だが、虹色の輝きに、見落としているものはないか。LGBTフレンドリーの正体を探る。
人気漫画家でエッセイストの能町みね子さんと、マニアックな人気のあるゲイライターのサムソン高橋さんが、「契約結婚」を前提に交際を始めた。能町さんは出生時の性を男性から変えた女性(MtF)。そこに恋愛感情はまったくない。なぜ、共に道を歩むことになったのか。サムソンさんの自宅で二人に話してもらった。
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サムソン高橋(以下「サ」):そもそもLGBTっていう当事者の意識ある?
能町みね子(以下「能」):言い方がアレだけど、「自分は自分」。「LGBTの中でどれですか」って聞かれたら「一応T(トランスジェンダー)ですかね」ってなりますけど。
サ:普段の生活ではないよね。
能:あんまり意識はしないですね。LGBTブームって何ですかね。言葉だけは流行ってますけど。
サ:アエラのことだから「LGBTが紡ぐ新家族のカタチ」みたいなダサい特集だよ。これに乗っかったら「クロワッサン」とかで連載もらえるかもしれない。
能:そういう括りでの「代表」ではないんじゃないかなあ。ただ、最近、モテないノンケ(異性愛者)の男友達に私たちのことを話したら、ムチャクチャ羨ましがられてうれしかった。その反応は思いつかなかったな。
サ:モテないやつに羨ましがられても、ありがたくねえなあ。
――二人の出会いは2010年11月、能町さんの出版記念イベント。お互いに人見知りで挨拶では目も見られなかったという。急転直下、関係に変化が訪れたのが昨年6月だ。
●本気で言ってるのかな
能:ツイッターで「お見合いがしたい。」と書いたんですよ。「経済と精神の効率のために結婚したいので、お互いに何も期待しない関係性がいい」って。
サ:他の記事でも「ゲイと結婚したい」って書いていたよね。
能:高橋さんが、あるゲイ差別事件のことを記事で書いていたんです。真面目に書いても、普段のように毒を吐いていても読ませる文章、大好きだった。「偽装結婚の相手として最高」って書いて。そうしたら「お互い道に迷ったらぜひ」って返してくれた。そこで「とりあえずお見合い(サシ飲み)しましょう」と。