「実はイランの人たちは、アメリカが好きなんです」(※写真はイメージ)
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 トランプ米政権のイラン敵視がすさまじい。穏健派大統領が再選したイランの反米感情をあおる言動に、素人外交の危うさがにじむ。

「実はイランの人たちは、アメリカが好きなんです」

 トランプ大統領の就任以降、急激に強まった米国の「イラン敵視」政策。ますます激しさを増す中、イラン人と日本人を親に持つ20代の女性は、母国を取り巻く情勢に懸念を示した。「政権と国民は分けて考えてほしい。国民の多くは、宗教色が強くなったイスラム革命前の親米路線を望んでいます」

 ブッシュ政権下で北朝鮮、イラクとともに「悪の枢軸」と呼ばれるなど、敵対の歴史が長く続いた米国とイラン。女性が語るイラン国民の「親米感情」は、5月19日にあったイラン大統領選でもうかがえた。

●イランののしる大統領

 投票率が73%を超えた大統領選で、6割近い票を得て再選したのは、対外融和路線をとる保守穏健派のロウハニ師。反米を基調とする保守強硬派の候補に圧勝しての再選だった。

 ロウハニ師は、オバマ前米政権が主導した米中など6カ国との協議で核合意を成立させた。イランが核開発を大幅に制限する代わりに同国への制裁を解除・緩和する内容で、歴史的な合意だった。これに反発したのが、米国以上にイランとの敵対関係が長いイスラエルやサウジアラビアだ。核合意は、逆に両国と米国の急激な関係悪化を招いた。

 これを改善する動きを見せるのがトランプ氏だ。「戦略なき素人外交」と言われる対外政策で唯一、揺るぎないものになっている。伝統的な友好国で、ともにユダヤ教徒のまな娘イバンカ、婿クシュナー両氏が最重要視するイスラエル。化石燃料主義のトランプ氏にとって重要なサウジアラビア。両国との信頼回復が最優先課題となった。そこで劇場型政治が得意なトランプ氏がとった戦略が、両国共通の敵である「イラン潰し」だった。

 初外遊先に選んだサウジ、イスラエル両国を訪問中、繰り返しイランを「テロ支援国家」と非難。核合意の対象外ではあるものの、ミサイル実験をやめない姿勢をののしり続けた。内戦が続くシリアで非武装地帯を設置する合意ができた5月初めにも、イランとともに交渉に関与したロシアとトルコの努力は評価したが、イランに対しては「暴力を助長している」と逆に責めた。

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