●中東全体が不安定に

 イランも黙っていない。ロウハニ師は22日、大統領再選後の初会見で、「イランなしで中東の安定は実現できない」などと米国を牽制(けんせい)。同日のマクロン仏大統領との電話会談でも、「間違った認識を持つ複数の国がある」と述べ、米国主導の「イラン包囲網」に不快感を示した。

 それでもロウハニ師は、核合意を放棄せず、対外開放政策を進める考えを変えていない。ただ、イランでは大統領の権限は限定的で、国政の最高決定権を持つのも、軍を掌握しているのも、聖職者の最高指導者ハメネイ師だ。反米色が強いハメネイ師の下でロウハニ師が対外融和路線を進められるのは、国民の支持があってこそ。その国民に反米感情をわざわざ植え付けるトランプ政権の敵視政策は、ロウハニ師の求心力を衰えさせ、対米強硬派を一気に勢いづける危険性をはらむ。結果として、中東全体を再び不安定化させる大きな要因になるのは確実だ。

 米国内では内政で壁にぶつかり、ロシア疑惑で自身への包囲網が構成されつつあるトランプ氏。形勢逆転への緊急避難先は外交・安保分野しかなく、ますます敵国の存在が重要になる。

 ただ、前出の女性は希望も見いだしている。

「経済制裁で国民は苦しんできた。人口の7割を占める39歳以下の世代は、イラン政府に反感を抱いている。政教一致の体制が終わらない限り、現状は変わらない。だから、『トランプがやっつけてくれるなら』くらいに思っているかもしれない」

(編集部・山本大輔)

AERA 2017年6月5日号

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