新聞販売店、宅配業者、郵便局など、全国津々浦々に拠点を持ちサービスを提供する業態。地域への細かな目配りができるという強みを生かして、今、新たなビジネスの地平に切り込もうとしている。
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「新聞を配っているだけではあまりにも寂しい。我々の事業の強みはやはり地域密着であること。地元のことは何でも知っているし、地元の情報を発信していくような企業になりたい」
大阪府枚方市を中心に10カ所の営業所を持ち、西日本の新聞販売店としては最多という購読者3万人を擁するマンモス新聞販売店「アクセス」。社長の村田孝義さん(58)はこう話す。この顧客数を生かして、1千店舗近い地元商店で割引などのサービスが受けられる会員制サービス「ひらかた朝日くらぶ」を展開している。のみならず、独自に割引特典付きのグルメ本や地域限定のスポーツ新聞を発行し、コメを宅配、果ては子ども向け英会話教室まで運営するという多角経営ぶりだ。
●独自取材でスポーツ紙
「顧客と地域と働く人たちが満足できるサービスを提供します」を経営理念に掲げる同社。地域住民にも喜んでもらいたいとの思いからまず手掛けたのが、「ひらかた朝日くらぶ」だ。地元商店にとっては無料で店舗情報を掲載でき、新規の顧客が獲得できるとあって、スタート時の150店舗から1千店舗近くまで拡大した。スポーツ新聞は、新聞の地域欄に載らないような地元のスポーツ大会を取材し、新聞読者に無料で届けている。
読者の新聞離れが進む今、9割新聞配達、1割折り込み広告という収入構造を改めなければならないと、社内には新規ビジネスの担当社員を配置している。将来的には6割新聞配達、1割折り込み広告、3割新規事業といった比率にできないかと考えている。
「地域に根差したさまざまなネットワークがコミュニティービジネスの基盤になるという動きが全国的にあります。これは今の日本社会の大きな構造変化に対応したものです」
こう解説するのはニッセイ基礎研究所主任研究員の土堤内昭雄さん(63)。自由に移動しづらい高齢者が増える中、生活水準を維持するにはICTツールの導入による効率化と、実際に物を届けるための物流の仕組みが必要になると指摘する。