ほかにも、買い物難民支援のために新聞販売店をドローンデリバリーの拠点にしたいと、NTTドコモ、ドローンメーカーのエンルートと共に実証実験中だ。新聞販売店で託児所や塾の運営もしたいと考えている。
「新聞販売店を、地域の全世代のサポート拠点にしたい」(青木さん)
●ヤマトも地域をお助け
全国に約4千カ所の集配拠点を持つヤマト運輸も、地域課題の解決に積極的だ。2010年から、地方自治体と連携しながら社会的課題を解決する「プロジェクトG」を全国的に進めている。
「地域の課題は、全国津々浦々、三者三様でどこも同じではない。課題を一番理解している自治体と協力しながら、地域の資源を活用し、さまざまなプレーヤーと連携してその場所に合ったサービスのモデルをつくっていくというスタンスです」
プロジェクトGの責任者、山口直人さん(36)はこう言う。
全国601の自治体でプロジェクトGを行っており、最も多いのは高齢者の見守り支援。高齢化率約55%の高知県大豊町では、地元商店と協力し、買い物の困難な高齢者向けに商品を配達している。高齢者の体調に異変があった場合に町役場に連絡するという見守り機能もある。
都内では高齢者が増える多摩ニュータウンで、多摩市とUR都市機構と協力。買い物支援、家事支援、コミュニティーの拠点づくりなどを含む総合的なサポートサービスを提供している。その中心になっているのが団地内に新たにつくった拠点「ネコサポステーション」。
「人が集うような仕掛けをつくっている」という拠点は、単なる荷分けや梱包の場ではなく、高齢者を中心とした地域住民の社交の場にもなっている。コミュニティースペースを設け、交流イベントやセミナーを企画運営。住民の相談に乗るコンシェルジュも常駐している。
「住みやすい街づくりを複合的にサポートするモデルを、まずは多摩ニュータウンでつくりたい。この仕組みが地域のお役に立てるということと、社の事業としても成り立つということを確認したうえで、ほかの地域にも広げていけたらと考えています」
●郵便局も新サービス
全国に張り巡らせたネットワークの強固さでは、2万4千強の郵便局が営業中の日本郵便も引けを取らない。13年からは郵便局員による高齢者宅の訪問見守り「郵便局のみまもりサービス」を行っている。蓄積したノウハウに基づき、同社はNTTドコモやセコム、日本IBMなど8社共同で近く新会社を設立し、高齢者向けの新たなサービスを事業化する方針だ。
少子高齢化で全国各地で課題が噴出する中、高齢化で一度は打撃を受けた地域密着型の企業がさまざまな業態と組みながら地域を立て直す側に回る──そんな未来が始まろうとしている。(編集部・山口亮子)
※AERA 2017年5月29日号