賀状も減るご時世。民営化後の郵政も豪での大やけどで赤字転落とやれやれだが、次なる狙いは不動産商売。武士の……いや日本郵政の商いの行く末はいかに。
「本業とのシナジー(相乗効果)があまり感じられない買収話ですね。持ち株会社の傘下に持ち分法適用会社としてぶら下げれば、収益のかさ上げ効果は見込めますが……」
ライバルのメガバンク幹部がこう指摘するのは、ここにきて急浮上した日本郵政グループによる野村不動産ホールディングス(HD)の買収構想だ。だが、交渉は水面下で始まったばかり。5月15日の決算発表ではこの件に質問が集中したものの、長門正貢社長は「東証に適時開示したこと以外に新しく報告する内容はない」とそっけなかった。
「お宝を持っている」
一方で、実はこんな経緯もある。「親元の野村証券は、かなり前から野村不動産を切り離していく方向で、株式の持ち分を引き下げてきていた」(不動産業界関係者)というのだ。野村不動産HDの2017年3月期決算は発売するマンション価格を抑え、販売戸数は回復して売り上げを伸ばしたが利益率は低下。既存のオフィスビルの修繕費用もかさみ、2期連続で減益。「まさに売り時」(同)というわけだ。
日本郵政グループにも買収に乗り出す動機がある。17年3月期決算の連結最終損益は、07年の郵政民営化以降で初めて289億円の赤字に転落。一方で国は日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の上場3社の株式の第2次売却の準備のさなかだ。株価の引き上げ材料が不可欠で、そこに浮上したのが今回の案件。政治的な要請が色濃い買収話、と見ていい。
さらにこんな見方もある。
「郵政グループで唯一、上場していない日本郵便は赤字続きでグループのお荷物だが、実は隠れたお宝を持っている。不動産事業だ」(与党関係者)
日本郵便は、国際物流やカタログ販売など13社にのぼる主要な子会社を持っているが、この中で不動産事業を手がける子会社は“隠れた有望企業”。なにせ郵政グループが持つ土地の時価総額は1兆5千億円にのぼり、上場企業でみても6番目の土地持ち企業で、しかも一等地の地主にほかならないのだ。