昨夏、管理組合と施工会社は共同で大規模修繕後の建物点検をした。すると、あちこちで不具合が見つかる。とくに屋上の防水がずさんで、施工者はすべてやり直した。費用は業者持ちだ。これでコンサルが監理をしたといえるのか。
目覚めた管理組合は再調査を進め、コンサルの設計事務所、日常管理を委ねる管理会社と、責任を問う交渉を重ねている。
●改修分野になだれ込む
いま、マンションの改修分野でコンサルを務める設計事務所は「野放し」状態だ。本来なら修繕工事の適正な仕様書を作り、それに基づいて管理組合が施工者を選ぶ支援をしなくてはならない。工事中は現場で検査などを通して施工者を指導し、竣工図書類を確認する。
まっとうなコンサルもいるが、改修に携わる設計事務所の職能団体はなく、業務の質はバラバラ、倫理規定もない。
そもそもマンション改修は、新築しか関心のない建設業界のニッチ産業だった。1980年代に外壁の大規模修繕が始まったころは管理組合が施工業者を決めていた。バブル崩壊後、新築の着工が激減し、1級建築士がコンサルとして改修分野になだれ込んだ。
●管理組合の理事と結託
問題はコンサルだけではない。首都圏でも「場所代」と称して管理会社が大規模修繕に関わる業者の上前をはねているという。一般社団法人マンション計画修繕施工協会(MKS)の中野谷昌司常務理事が施工業者の心情を代弁する。
「リベートを払わなかったら、今後、うちの管理物件で仕事させないと言われたら、業者は泣く泣く払います。ひと口に管理会社といっても、さまざま。会社ぐるみ、支店単位、あるいはフロントマンや技術系社員が個人で要求するケースもあります」
リベート問題でやっかいなのは、コンサルが管理組合の理事と結託した場合だ。密室でことは進み、修繕積立金が吸い取られる。リベートはコンサル経由で理事にも……と疑念が生じる。
京都市左京区の90戸・築後40年のマンションが、このケースに当てはまる。もともと自治意識が高く管理会社を置かず、住民が「自主管理」を続けてきた。