結局、管理組合は高い買い物になる…(AERA 2017年5月29日号より)
結局、管理組合は高い買い物になる…(AERA 2017年5月29日号より)
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 住民でつくる管理組合は、専門知識を持たない。大規模修繕の際は、設計事務所などコンサルタントに頼る。ところが悪質コンサルが跋扈している。

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 マンション改修の悪質コンサルタントは、深く、静かに侵入する。住民が気づいたときには、コツコツ貯めた修繕積立金がごっそり巻き上げられている。

 京都市右京区の団地型分譲マンションは、3年前に実施した大規模修繕をめぐって激しく揺れている。当時の管理組合理事長は、引っ越してきたばかりだった。管理会社の紹介で大手設計事務所をコンサルに選び、大規模修繕への手続きを進めた。マンションの戸数は400、築後40年で3度目の大規模修繕だった。理事長はコンサルから「3億円程度で可能」と聞き、施工会社4社を集めて修繕工事の入札を行った。

 そして、住民環視の集会で、公正を期して同時に入札書を開き、理事長は動転する。最低の工事費でさえ「5億2千万円」だったのだ。理事長は、話が違う、とコンサルに書簡を出すが、3億円と確約した覚えはない、とはね返された。着工間近、時間がないと押し切られる。修繕積立金だけでは足りず、管理組合は何と1億5千万円の借金をして大規模修繕を行った。

 この間、多数の住民は「専門家に任せておけばいい」と看過した。昨年、管理組合の理事が一新され、40代の女性新理事がNPO法人京滋マンション管理対策協議会(京滋管対協)に相談を寄せ、コンサルの悪質さが再確認された。女性理事が言う。

「事前に他のマンションと情報交換をしていたら、2億円もドブに捨てはしなかった。悔しい。理事長のなり手がなくて、事情にうとい人に任せた結果です。管理組合が目覚めないと何も変わりません」。新理事10人のうち9人が女性になった。

 工事費は、どう流れたのか。京滋管対協の谷垣千秋代表幹事が推測する。

「その設計事務所は京都の一等地に会社を構えていますが、過去にトラブルを起こしています。設計や監理(チェック)のコンサル料を安くして管理組合に近づき、施工会社に高い工事費で請け負わせ、リベートを取る。結局、管理組合には高い買い物になるのです。あの設計事務所の仕事はしないと宣言した業者もいます」

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