●自分で異変を通報する
「例えば食事の宅配サービスを週1、2回入れておくと、たいてい安否確認もかねて手渡ししてくれるので安心です。訪問介護サービスに慣れることもできます。利用回数に融通が利くか、緊急通報サービスと連携しているかといったポイントを確認しましょう」(太田さん)
倒れてしまう前に自分で異変を通報する、いわゆる「緊急通報システム」の活用も大切だ。多くの自治体では条件付きで、ボタンを押すと警備会社や消防などが駆けつけられる「緊急通報システム」を持っている。大手警備会社のALSOKではボタンにより警備員が駆けつけるほか、「相談ボタン」で自社のヘルスケアセンターの相談員と24時間会話ができる「みまもりサポート」を月2400円(税別、設置費用別)で展開する。
「倒れていたり、冷蔵庫の裏に挟まっていたりするのを助けたこともありました」(担当者)
この金額ならば、年金暮らしでもぎりぎり対応できるかもしれない。
通報以上に正確に行動を把握できる「見守りサービス」は、孤立死防止以外にも効果を発揮する。前出の藤原さんは14年、見守りセンサーが高齢者支援にどの程度役立つかを調査した。ちょうどいい時間の訪問や的確なケアができるようになったため、要介護度の悪化を防ぐ効果を確認できたという。
とはいえ、「高齢者自身が見守りサービスの導入を嫌がるケースが多い」とも藤原さんは言う。特に認知症が進めば、そういった機械を家に入れること自体を拒むケースが非常に多くなる。30分ごとの電力使用量の推移の変化から異常を察知する「はぴeまもるくん」(関西電力)など特別な装置がいらないサービスも増えつつあるが、異常を察知しても家族が遠方にいる場合など、誰が訪問するのかも問題になる。現時点では一軒家などだとカーテンがそよいでもセンサーが反応することもあり、見守る側の労力を考えると普及は簡単ではない。
どんなコミュ障高齢者でも体調の急変や孤立死を防げるようになるためには「高齢者の動きをより正確にモニタリングできるセンサーの精度向上が不可欠」と藤原さんは言う。
●福音をもたらすAI
センサーによる生産性の向上をもたらす鍵はAI(人工知能)の活用だ。国際医療福祉大学大学院の高橋泰教授(医療経営)は、「介護業界の深刻な人手不足を解消する切り札はAIです」と語る。
「AIにより正確に要介護者の行動を認識し必要なときだけアラームを鳴らせるようになれば、例えば夜勤の人間を減らせるようになります。技術的には今でも可能で、予算とマンパワーがつけばすぐ動き始めるはずです」
的確な見守りが可能になればサービスも普及し、廉価な提供も可能になるだろう。コミュ障高齢者にとっての福音は、AIがもたらすかもしれない。
(編集部・福井洋平、澤田晃宏)
※AERA 2017年5月15日号