「こんな死に方はいやだ、これだけ迷惑がかかるという実態を認識すれば、自分でなんとかしなければと思うようになる。やらされていると感じていることは長続きしないんです」
吉田さんは孤立死回避のために、「おひとりさまでもだいじょうぶノート。」を作った。最期の場所や方法、葬儀の希望などに加え遺言の執行人を誰にするか、所有不動産の詳細、遺品の整理方法、ペットの行き先など具体的なポイントを簡潔に書き記せるようになっている。
「いつ死ぬかが分かっていれば準備もできますが、これだけは誰もわからない。だからひとつの考えですが、仮にあと何年と寿命を決めて、それまでにしたいことは何か、何をしないといけないのか、誰に何をお願いしないといけないのかを考えるといい。そうすれば自分が明日何をすべきかはっきり意識でき、人とのコミュニケーションも生まれ、社会から孤立しにくくなると思うのです」(吉田さん)
東京都健康長寿医療センター研究所は、高齢者福祉のよろず相談窓口である「地域包括支援センター」への聞き取り調査をもとに、見守りのチェックポイントを整理した。「新聞や郵便物がたまっている」「夜、電気がつかない」「同じ洗濯物が何日も干しっぱなし」といった危険な状況の察知につながる項目もある。最低限地域の中でコミュニケーションを取っていれば、こういったSOSをチェックしてくれる人も出てくるだろう。同センターの藤原佳典さんは言う。
「趣味や習い事などのネットワークをうまく地元でのつながりに結びつけていく努力も必要です」
SNSやメーリングリストで定期的に連絡を取りあう仲間を見つけるなど、ちょっとした工夫でも深刻な孤立死は防げるだろう。気持ちの持ちようや自助努力で回避できる孤立死は間違いなく存在する。
●貧困により孤立に
一方で見過ごせないのは、高齢者が貧困により孤立に追い込まれるという構図だ。家計が苦しくなり交際費がなくなると、親戚の冠婚葬祭にも行けなくなり、近所付き合いもなくなる。親族や地域との関係が希薄化する、と『老人に冷たい国・日本』などの著書がある明治学院大学の河合克義教授(社会福祉学)は説明する。