作家の目取真俊は辺見庸氏との対談(4月16日付沖縄タイムス、琉球新報など<共同通信配信記事>)で、こう問い掛ける。
「沖縄が暴動寸前の状況になり、本当に米海兵隊が撤退する事態に至ったとき、ヤマトゥの人は『沖縄県民が望んだことが実現してよかった』と歓迎するだろうか」
さらに沖縄独立論に触れ、「まだ政治的力」はないとしつつも、「そもそも、日本政府が独立を認めることはあり得ないと思う」と悟り、こう予見する。「領土だけではなく、広大な領海も失う。そうなれば、自衛隊が出動し、県民に銃を撃つかもしれない」
これは妄想ではない。歴史認識を欠いたまま、「本土」の人間が沖縄に対して当事者意識をもつとき、その振る舞いはより残酷になるリスクは確かにある。
作家の姜信子は非常勤講師をしていた九州の大学で、石垣市在住の八重山戦史・芸能史研究の第一人者である大田静男氏を招いた特別講義でのエピソードを紹介している。
「大田さんは講演の最後に学生たちにこう尋ねた。『沖縄が独立宣言をする、それを認めぬ日本国が沖縄を攻撃するとする、もし君たちが日本軍兵士ならば、国家の命令通り沖縄に銃を向けるか?』。そのとき、大教室にいた男子学生の多くが、銃を向けると答えた」(3月2日付琉球新報)
これは10年余り前の出来事だというが、現在であれば一層酷い学生たちの反応に直面するのではないか。そう悲観せずにはおられないほど、沖縄と「本土」の亀裂は取り返しがつかないほど深まってしまった。
この国の内部で今、何かが壊れつつある。沖縄のシグナルに耳を傾けることが日本の進路を誤らせないためにも重要である、と確信している。(編集部・渡辺豪)
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